2007年12月

2007年12月31日

心停止後腎移植の22%が延命中止ドナー 9年間に280件

死亡後に腎臓を提供する「献腎移植」のうち、心臓停止前に人工呼吸器を止めて延命治療を中止した提供者(ドナー)からの移植が、平成7−15年の約9年間に280件あったことが、日本臓器移植ネットワーク(東京)の集計で30日、分かった。同期間の心停止後腎移植全体の約22%を占める。
 
終末期医療の現場で行われてきた呼吸器中止の実情の一端を示すデータとして注目される。個々のケースでどのような延命中止の判断があったかは明らかにされておらず、専門家は「移植のために延命中止を急ぐことがないか、妥当性の検証が必要」と指摘している。
 
移植にかかわったコーディネーターが1件ごとにコンピューターに登録した症例情報を基に、移植ネット統計解析委員会が16年に集計。それによると、7年4月から15年12月にかけ、心停止後の腎移植は全国で1279件あった。
 
呼吸器中止の280件を含め、移植ネットの小中節子理事は「すべての移植例が、内部の評価委員会で『手続きに問題はない』と判断されている」と説明。その上で、原則論として「呼吸器を中止するかどうかは終末期医療の問題で、移植ネットがかかわるべきではないと考える」としている。
 
移植に詳しい医療関係者は「終末期に呼吸器をつけたまま長い期間が経過すると、デメリットとして臓器が弱り移植できなくなる場合もある。提供意思があって呼吸器を中止する際、常識的には脳死の診断をしていると考えられるが、どこまで厳格な基準で診断しているかは施設によってばらつきもあるのでないか」と指摘している。
 
移植ネットは集計結果を基に、呼吸器中止や摘出準備として行われる心停止前の管挿入などの要因と腎臓の生着率の関係を分析、呼吸器中止の有無は生着率に大きな影響はないとの結果だった。
(22%が延命中止ドナー 腎移植、9年間に280件)


昨年、富山県射水市の病院で発覚した人工呼吸器取り外し問題を契機に、延命中止のルール作りが話題になりました。最近では、京都府長岡京市の医師が、全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症した義母に十分な説明をせずに、人工呼吸器による延命措置を行わないことを決め、この女性が昨年死亡したとの報告を、専門誌に発表していたことがトピックスになりました。

その結果、回復の見込みがなくなった救急患者に対する延命治療中止の指針を検討していた日本救急医学会は今年の2月、都内で理事会と評議員会を開き、指針案を提出しました。

その当の回復不可能な"終末期"の定義としては、以下の4つが示されています。
1.脳死
2.生命が人工的装置に依存し、生命維持に必須な臓器の機能不全が不可逆
3.他に治療方法がなく、現在の治療を継続しても数日以内の死亡が予想される
4.悪性疾患や回復不可能な病気の末期であることが判明した場合

また、終末期と判断した場合に延命治療を継続するか中止するかの判断は、家族が同意している場合は、患者本人の生前の意思に従うとしています。

ですが、家族の意思が明らかでなかったり判断できない場合は、家族や関係者の納得を得て、医療チームが治療中止の是非や時期を判断。患者本人の意思が不明で、家族とも接触できない場合は、医療チームで慎重に判断する、としています。

延命治療中止の方法としては、
1.家族立ち会いのもとで、人工呼吸器、ペースメーカー、人工心肺などを中止
2.人工透析や血液浄化などの治療を行わない
3.呼吸管理・循環管理の方法の変更
4.水分や栄養の補給の中止

 の4方法が示されています。

また、8月には患者の意思確認などの条件を満たせば「延命治療の中止を考慮してよい」とする「暫定指針」を日本医科大(東京都文京区)が作成しており、付属4病院で運用を始められています。

指針は「終末期」を「病気やけがで2週間以内から長くても1カ月以内に死が訪れることが必至の状態」、または「医学的に不治と判断され、生命維持処置が死の瞬間を延期することだけに役立っている状態」と定義。

その上で、
1)終末期の判断は必ずチームで行い、主治医1人で判断しない。
2)延命治療を希望しない患者の意思を本人の書面や家族の話などで確認
3)患者の意思に対する家族の同意

この3条件がそろえば、個々の中止内容などを家族と話し合いながら検討するそうです。

終末期医療の一端をのぞかせる実情としては、以下のような学会調査が示されています。続きを読む

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麻疹にインフルエンザ、ノロウィルス…2007年度に流行した疾患

2007年も日本列島はさまざま感染症に見舞われた。特徴的だったのは、はしかや百日咳など“子供の病気”がわれわれ大人の脅威となったことだ。

【麻疹(はしか)】
今年4月、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県の10代、20代を中心に流行。その後、全国に拡大。高校や大学の休校が相次ぐなどパニックになった。
ワクチンの問題が大きい、と指摘する専門家も多い。というのも、他の先進国は、麻疹関連のワクチンは2回接種が主。ところが日本は過去20年をさかのぼって見てもワクチン接種は1回という人が多い。今後も成人麻疹が流行する可能性は十分に残されている。

【インフルエンザ】
今シーズンのインフルエンザは、過去20年で最も早く11月中から全国的な流行が始まった。
「沖縄県では、冬だけでなく夏場にも流行するなど3シーズン連続で発生。今年は、終息の切れ目もはっきりしていない」と話すのは国立感染症研究所・安井良則主任研究官。ワクチンは企業内でも推奨されつつあるが摂取率はまだ低い。今後、どの程度流行拡大するのか予測不能だ。

【ノロウイルス】
今年も流行のピークを迎えつつある。ウイルスはほこりとともに舞い上がり、それを吸い込む「塵埃感染」により被害を広げる。昨年の大流行で吐物や下痢便の適切な処理の重要性も認識されつつある。しかし、それだけでは流行は防げない。
「保育園や幼稚園などの集団施設では発病者から直接感染して施設内で蔓延し、地域内の流行に繋がっていっていると思われる。大人も含め、具合が悪いときには、休ませる勇気、休む勇気が必要といえる」(安井主任研究官)

【百日咳】
1歳未満で感染すると重篤な症状を引き起こすが、年々、成人層での発病者が増加。
「小児の流行が大きく減少する一方で、20代以上の若者の間で、過去に接種したワクチンの抗体価が下がっていると思われる。百日咳は大人の病にもなりつつある」
身近に迫る感染症は、来年も、人間の油断をついて猛威を振るいそうだ。
(07年の日本列島…猛威振るった感染症を総括)


麻疹に関しては、厚生労働省の予防接種に関する検討会にて、国内での麻疹の流行をなくすため「麻疹排除計画」を策定することで合意したそうです。平成24年までの5年間をかけて、ワクチン接種により免疫保有率を95%以上に高め、患者が発生しても流行が起きない状況にすることを目指しています。

麻疹予防には、ワクチンの2回接種が重要とされますが、たたき台では昨年から始まった小学校入学までの2回接種の徹底に加え、接種の機会が1回だった世代に対し、5年間の時限措置として中学1年生と高校3年生での定期予防接種を追加する案などが示されています。

麻疹・風疹混合ワクチンとは、従来の麻疹・風疹ワクチンを混合し、1回で接種するために使用されるワクチンです。予防接種法改正に伴い、2006年4月から接種が開始されました。麻疹(Measles)、風疹(Rubella)の頭文字をとってMRワクチンともいいます。

2006年4月以降、新規にワクチンを接種する1歳以上2歳未満の幼児からは、麻疹・風疹混合ワクチンを接種することが可能となりました。接種スケジュールとしては、以下のようになっています。1回目は月齢12〜23ヶ月、2回目は小学校入学前の1年間で行われます。

インフルエンザのトピックスとしては、異常行動とタミフル、インフルエンザ脳炎・脳症などとの関連でしょう。インフルエンザ治療薬タミフルと異常行動の関係を科学的に検証してきた厚生労働省の調査会は12月25日、因果関係の有無の明確な結論を出せず、先送りしています。調査会座長の松本和則・国際医療福祉大教授は、現状維持の結論について「現時点ではタミフルと因果関係を示す結果は得られていない。解析が終わっていない調査があり、使用解禁の根拠がない」としており、調査の困難さが伺えます。

現在、10代は体格などによるが、異常行動を静止することが難しいことがあり、タミフルの使用を控え、10代未満ではインフルエンザでの死亡率が高く、静止も容易であるということで使用可能、としています。10代には、同じノイラミニダーゼ阻害薬であるリレンザを処方し、それ以外はリレンザかタミフルか選んでもらう、という方針の病院が多いのではないでしょうか。

ノロウイルスは、最近ではNTT東日本長野病院にて31日、入院患者や看護師など計25人が下痢や嘔吐などの症状を訴え、うち80代の女性入院患者が30日に死亡したと発表されています。

また、栃木県では12月25日に学校給食で出たケーキを食べた児童、生徒と教職員98人が下痢などの症状を訴えた、と発表されています。12月始めにも、横浜市立藤が丘小学校で、児童が相次いで嘔吐や発熱などの症状を訴え、169人が欠席、36人が早退しているなど200人近くが感染してしまったとされています。

特に、「患者のノロウイルスが大量に含まれる糞便や吐物から人の手などを介して二次感染」が多いように思われます。そのため、以下のような予防策が重要であると考えられます。対策としては、石けんを使った流水での手洗いと、一般家庭にもある塩素系漂白剤による食器やまな板などの消毒が重要であるといわれています。

百日咳の特徴としては、以下のようなものがあります。続きを読む

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病院内でノロウィルス集団感染 80代女性亡くなる

NTT東日本長野病院(長野市三輪)は31日、入院患者や看護師など計25人が下痢や嘔吐などの症状を訴え、うち80代の女性入院患者が30日に死亡したと発表した。女性を含め6人からノロウイルスが検出された。感染性胃腸炎の集団発生とみられる。

同病院によると、症状を訴えたのは、73歳から97歳の患者17人と、28歳から60歳の看護師と薬剤師8人。24日から症状を訴え始めたという。
(ノロ集団感染で80代女性死亡 NTT東日本長野病院)


感染性胃腸炎の患者報告数が急増していることが、国立感染症研究所の12月16日までの集計で明らかになっています。大半はノロウイルスが原因とみられ、九州地方で特に多いという局地差があるようです。

全国約3,000の小児科定点医療機関からの報告は、12月2日までの1週間で4万1003人(定点当たり13.6人)で、前週の約1.5倍に増加したそうです。都道府県別の定点当たり報告数は、長崎の34.7人が最多。大分32.1人、佐賀29.0人、福岡26.7人、熊本26.2人と続き、九州での流行が目立ちます。

最近では、12月始めに横浜市立藤が丘小学校で、児童が相次いで嘔吐や発熱などの症状を訴え、169人が欠席、36人が早退していたことが分かっています。同市教育委員会によると、症状は軽く入院した児童はいなかったそうですが、青葉区福祉保健センターは、集団食中毒や、ウイルス性の感染症の疑いがあるとみて調査していました。

11月には、品川プリンスホテルで開かれたパーティーに参加した宴会客が下痢や腹痛、発熱といった症状を訴え、少なくとも5人の便からノロウイルスが検出されていたことが明らかとなりました。

4月にも、王子市の精神科病院の入院患者が嘔吐や下痢、発熱の症状を訴え、保健所が調査した結果、ノロウイルスが原因の食中毒と断定したと発表されていました。発症者は患者42人とのことです。

ノロウィルスの感染経路には、以下のようなものがあります。
1)汚染されていた貝類を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
2)食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を行う者などが含まれます)が感染しており、汚染した食品を食べた場合
3)患者のノロウイルスが大量に含まれる糞便や吐物から人の手などを介して二次感染した場合
4)家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ飛沫感染等直接感染する場合
5)ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合

特に、「患者のノロウイルスが大量に含まれる糞便や吐物から人の手などを介して二次感染」が多いように思われます。そのため、以下のような予防策が重要であると考えられます。続きを読む

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2007年12月30日

深部静脈血栓症に対する血管内治療中の医療ミス

石川県羽咋市の公立羽咋病院(鵜浦雅志院長)で平成17年、静脈にカテーテルを挿入する手術を受けた女性患者=当時(79)=が、手術中に心臓を傷つけられ死亡する事故があり、県警羽咋署が業務上過失致死容疑で、当時病院に勤務していた担当の男性医師(36)を書類送検していたことが30日、分かった。

羽咋病院などによると、女性は17年1月に交通事故のため入院。左足にできた血栓を取り除くために静脈に管を入れ、首から心臓を経由して左足まで通す手術を受けたが、手術の2日後に容体が急変して死亡した。カテーテルが心臓を傷つけたとみられる。

男性医師はすでに病院を退職しており、挿管ミスを認めているという。羽咋署は今年3月に医師を書類送検した。羽咋病院は「ご迷惑をおかけし大変申し訳ない。今後再発防止に努めたい」としている。
(挿管ミスで心臓に傷 女性患者死亡で医師送検)


上記のケースでは、深部静脈血栓症に対する血管内治療が行われていたと思われます。深部静脈血栓症とは、深部静脈(大腿静脈・膝窩静脈など、体の深部にある静脈)に血栓が出来る病気です。交通事故や手術後など、長期臥床(長く寝ていなくてはならない状態)にある患者さんにおいて起こりやすいです。肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)の主な原因ともなったり、肝静脈に血栓が出来るとバッド・キアリ症候群を起こすこともあります。

60〜70%以上は左下肢で、女性に多いといわれています。その理由は、解剖学的に左総腸骨静脈は右総腸骨動脈に騎乗され、腰仙関節との間に挟まれて圧迫されやすく、血流が停滞するために発症するのではないか、と説明されています。ちなみに、右または両下肢に発症した場合は膠原病やベーチェット病などの血管炎が基礎にあるのではないか、と考える必要があるそうです。

症状としては、深部に血栓ができた場合は、痺れや皮膚色の変色、血栓より遠位の浮腫などといったことが起こりますが、無症状のこともあります。血栓が飛んで肺塞栓を引き起こすと、呼吸困難と胸痛などの症状が出て、死に至ることもあります。「手術後にリハビリを開始した女性が、胸痛や呼吸困難を起こした」というシチュエーションが医師国家試験には結構でてますが、これは肺血栓塞栓症を想定したものです。上記にも書きましたが、手術後に臥床していた後に動くと、脱水や血液凝固能の亢進なども関係して肺血栓塞栓症を起こしやすい、というわけです。

深部静脈血栓症に対する治療は、以下のようなものがあります。続きを読む

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