<考察>
・僧帽弁閉鎖不全症の診断
 確定診断としては、心エコーにてカラードップラー法、もしくは心臓カテーテル検査での左室造影にてLVよりLAへの逆流を確認することである。本症例では、心エコーにてカラードップラー法を施行したところ、逆流が認められた(PISA:ERO 0.15cm2 RV 27ml)。また、心臓カテーテル検査にてMR(Sellers分類にて慧戮竜嬶)であった。以上より、僧帽弁閉鎖不全症との診断がつくと考えられる。
 重症度としては、心エコー図法でMRの定量的評価を行うと(PISA法:MR jet の吸い込み血流から逆流量を求める方法)、僧帽弁逆流量(RV)27ml<45ml 有効僧帽弁逆流口面積(ERO)0.15cm2<0.3cm2 であったため、軽症であると考えられる。
 僧帽弁閉鎖不全症の手術に関するガイドライン(日本循環器学会Circulation Journal 66(Suppl 4) 2002)によると、そのガイドラインとしては、以下のようになっている。

1)僧帽弁手術に関する推奨
1.急性症候性僧帽弁閉鎖不全
2. NYHA凝抂幣紊如∈玄宍’柔犠錣両瀕
3. 左室機能低下の軽度な症候性または無症候性の症例
4.心房細動のある、または肺動脈圧50以上の無症候性の症例
5.LVEFが50〜60%で、LVDsが45未満の無症候性の症例
6.LVEFが60%以上で、LVDsが45〜55の無症候性の症例
2)僧帽弁手術の手術危険率と予後に影響する因子
1.手術危険率 弁置換術6%、弁形成術2%
2.予後に影響する術前危険因子
3.術前の左室機能、NYHA心機能分類、心房細動、冠動脈疾患の合併、手術術式

・僧帽弁形成術について
 近年における僧帽弁形成術の対象病変は、弁装置の変性や虚血性心疾患による逆流症が主である。弁形成に用いる手技は、弁葉の逸脱の矯正と弁輪拡大に対する縫縮に大別される。本症例では弁葉の逸脱はなく、弁輪拡大に対する縫縮術に関しては、弁輪全周縫縮手技を行った。弁輪全周縫縮手技は、市販の人工リングを弁輪全周に縫着する方法で、前尖側弁輪は短縮されず、両交連域から後尖側弁輪が縫縮される。弁輪の形状を再構築することを基本コンセプトとするCarpentier ring(rigid typeとsemiflexible typeがある)と、全周性にflexibleとしたDuran ringがある。特にCarpentier ringはrigid type、semiflexible typeともに弁輪形態の矯正を重視する場合に選択する。弁輪前後径を確実に短縮できる点で、虚血性MRや心筋症に合併するMR、またリウマチ性MRに推奨される。方法としては、3-0ないし4-0編糸を用い、弁輪に13〜15本のマットレスをかける。弁輪のやや心房側より針を刺入し、一部が左室側へでるように心がける。リングサイズの選択は、交連間距離を計測して決定するように設計されている。