・心房細動について
 心房細動とは、心房の各部分の無秩序な電気的興奮により、心房の細かな興奮が心室へ不規則に伝導するため、心室のリズムも不規則となる状態をいう。その病態としては、マクロリエントリー、マイクロリエントリー、そこから発生した興奮、固定あるいは流動的なリエントリー、自動能亢進などが複雑に存在し構成されていると考えられている。
 心房細動に対する治療の中心は現在も薬物療法である。薬物療法には、‘仰肝Г琉飮、⊃看鐃瑤離灰鵐肇蹇璽襦↓7貔鮑廟鮠匹陵祝 の3つの大きな目的がある。また、心房細動の状態に応じて、慢性心房細動は電気的除細動を施行しても洞調律への復帰が不可能で、洞調律復帰を目指すのではなく、心拍数コントロールと血栓塞栓症の予防が治療目的となる。発作性心房細動では洞調律維持も治療の目的とされ、儀温撹埓位薬、β遮断薬、ソタロールなどの祁温撹埓位薬、ベブリジル、アミオダロンなどが用いられる。本症例では、ワソラン(カルシウム拮抗薬)、リスモダン(1a群抗不整脈薬)を用いている。
 心房細動手術の適応については、日本循環器学会・不整脈の非薬物療法ガイドラインによれば、本症例はクラスa(基礎心疾患に対する心臓手術を行う場合)であり、かつ手術が有益であるとされているため、手術適応があると考えられる(http://www.nms.ac.jp/jnms/2002/06903294j.pdf 参照のこと)。また、その基礎心疾患が僧帽弁閉鎖不全症であり、僧帽弁形成術を施行するため、抗凝固両方が不要になるため、心房細動手術同時施行が好ましいとされている。本症例では、Maze手術を行った。

・Maze手術
1991 年にCox ら4 により発表されたMaze 手術は、すべての肺静脈を含む左房後壁を電気的に隔離するだけでなく、解剖学的障壁周囲を旋回するマクロリエントリー回路を全て切断し、さらに心房筋を一定の幅以下に切離し再縫合することにより心房リエントリーをブロックし心房細動の維持を阻止する、という術式である。
 洞房結節→房室結節の途中にマクロリエントリー回路が存在するがために心房細動が生じている状態が左である。そこで、その心房細動を生じる伝導路を切離し再縫合するのがmaze手術である 
 Maze手術の利点としては、1)弁形成術施行例における抗凝固療法の回避 2)弁置換施行例における血栓塞栓症発生率の低下 3)洞調律への回復による心拍出量や運動耐用能の増大 などがある。一方、欠点としては、1)大動脈遮断時間、体外循環時間、手術時間の延長2)術後出血の増大 3)適応基準や術式が必ずしも確立されていない などである。
 Maze手術の適応としては、ECGにてV1のf波の高さ>0.1mV、胸部X線 CTR<70% 心エコーにて左房径<70mm であるが、本症例ではこれらを満たしている。これらの条件を満たした症例の約80%が洞調律に回復しているとされている。
 本症例では、小坂井−maze手術を行った。これは、上記maze手術本来の方法に以下の4つの改良、すなわち‘況訐疇位を温存するための手技の簡便化のために凍結法を多用し、切開線も全ての洞結節動脈を避けた。 大きくなった心房は4cm幅に切除し、リエントリーをさらに起こりにくくした。 左心耳の一部と右心耳の全部を温存した。 ち遼絞曚了詭遒鬚茲するために、上大静脈を横切する というものである。