−子宮頸癌に対する放射線治療について−

・子宮頸癌の概要
 子宮頚に発生した癌をいう。子宮頚癌は女性性器癌の中で最も頻度が高い(子宮頸癌は女性の全悪性腫瘍中、乳癌、胃癌、結腸癌についで4番目の罹患率であり、40代後半にピークがある)。日本における子宮頸癌の死亡率は、がん検診の普及によって減少傾向にあるが、発展途上国では依然として死亡率の最も高い疾患のひとつである。ヒトパピローマウイルス(HPV-11)との関連性が注目されている…注1)。子宮頚癌と子宮体癌の比は、わが国ではほぼ90:10である。好発年齢は50歳程度で、初交年齢の低いもの、分娩回数の多いものなどに発生率が高いとされている。病理組織学的には、頚癌の約95%が扁平上皮癌であり、腺癌が5%程度であるが、扁平上皮癌と腺癌との混合型もある。
 発生部位は、主として子宮頚の扁平‐円柱上皮接合部squamocolumnar junction(SCJ)の内方の円柱上皮領域である。扁平上皮癌の発生母細胞は、子宮頚腺下にある予備細胞であるとされている。予備細胞の増殖、異形成などの過程を経て、上皮内癌、浸潤癌になる。上皮内癌(臨床進行期では0期)および微小浸潤癌(Ia期)のほとんどが無症状である。浸潤癌の多くは、不正性器出血、接触出血あるいは帯下などを訴える。

注1)HPV 感染による悪性腫瘍形成には,ウイルスのコードする E6 と E7 という二つのtransforming gene が重要な役割を果たしている。それには主に,これらの遺伝子産物が細胞の主要ながん抑制遺伝子産物である p53 と pRb を不活化する機能が関与している。p53 と pRb は,いずれも細胞周期チェック機構に関与しており,DNA 損傷や過剰な増殖刺激,ストレスなどに応じて,細胞分裂を停止させ適切な細胞内環境の回復に機能し,若しくは細胞死を誘導することで異常細胞を除去する機構に関与している。E6 と E7 によりこれらのがん抑制機構が失われていることで,HPV 感染細胞は染色体異常の蓄積や,過剰な増殖刺激に対して寛容になり,その結果,変異を持った細胞が多く感染部位に蓄積し,その中から悪性形質を獲得した細胞が出現するものと考えられる。
DEPARTMENT OF VIRAL ONCOLOGY LABORATORY OF GENE ANALYSIS参照