・治療計画について 
 治療法としては、本邦では手術、放射線および化学療法などがあるが、主体となるものは手術療法と放射線療法である。手術療法は0, IおよびII期癌だけに行い、,鹸の癌には原則として手術療法は行わないとされている。放射線療法は、主として手術不能例がその対象となる。ただし、欧米では1999年に米国国立がん研究所は「進行期子宮頸がんに対して放射線治療とシスプラチンを主体とする化学療法を同時併用することは生存率を有意に改善し、有効な治療法である」とのアナウンスが出されており、このアナウンスがもたらした影響は大きく、欧米では現在は進行期子宮頸がんに対しては化学放射線治療が標準治療とされている。実際には、どちらの治療法(手術療法、もしくは放射線治療)を選択してもほぼ同等の治療成績が上げられている。一般に、子宮頸部に発生する扁平上皮癌は、頭頸部癌や食道癌などの扁平上皮癌よりも良好な放射線照射効果を示す場合が多い。このため大きな腫瘍であっても放射線治療で治癒がかなり期待できると考えられる。
 本症例は、ステージb期の子宮頸癌、組織診にて高分化型の角化性扁平上皮癌と診断されている。FIGOおよびNCCN Clinical Practice Guidelines in Oncorogyによれば、ともに本症例では化学放射線療法+腔内照射が推奨されている。原発腫瘍のサイズは、重要な予後因子であり、至適治療法の選択にあたっては慎重に評価すべきであるとされている。本症例では、子宮頸部が40mmを超えて腫大している扁平上皮癌であり、放射線療法を一次治療とすべきであると考えられる。またPDQによれば、第形螢薀鵐瀬牴住邯5件によって、シスプラチンベースの化学療法と放射線療法との同時併用療法が全生存に有利であることが示されていると示されている。故に、放射線治療が第一選択となりうると考えられる。また、1)本症例ではリンパ節転移があり、術後照射を行う必要があるため、手術するにしても放射線治療が必要になること、2)治療成績は手術療法と放射線療法で変わらないにも変わらず、手術による侵襲性によって神経叢の損傷による直腸膀胱障害やリンパ浮腫、膀胱膣瘻、尿管膣瘻、直腸膣瘻といった術後合併症が問題となる可能性がある、3)腫瘍最大径が40mmと大きい挟の癌であるため、CCRTの適応が望ましい、などの理由から、放射線療法(化学療法含む)の選択が支持されると考えられる。
 治療内容としては、週1回の化学療法としてシスプラチン(40mg/m2/week)を静注し、かつ30Gyの外部照射の後、20Gyの腔内照射、すなわち総線量50Gyの照射を行う予定である。線種はX線であり、線量は10MVである。照射方法は前後対向2門で実施し、照射範囲は子宮、付属器、膣の頭側1/3、子宮傍結合織(基靱帯、膀胱子宮靱帯など)および骨盤内リンパ節であり、照射野は、上縁は第5腰椎上縁、下縁は閉鎖孔下縁、左右の外側は小骨盤腔から1〜2cm外側とする。治療スケジュールは週5回照射の単純分割照射で、週間病巣線量を10.0Gy前後とする。腔内照射は高線量率(HDR)治療である。 

・治療成績について
 挟の子宮頸癌の放射線治療成績は5生率でみると60%〜80%であるとされている。また、Calfornia Endocurietherapy Cancer Centerの調べによれば、27例中25例(93%)の局所制御や22例(81%)の骨盤内制御が得られ、遠隔転移を起こしたのは9例(33%)という成績を得た。
 また、本症例の治療方針であるCCRT(concurrent chemoradiation , 同時併用化学放射線療法)については、11の臨床試験を用いたメタアナリシス(Green ,IA et al Iancet 358:781-86 2001)によれば、CCRTによって全体で生存率が12%、非再発生存が16%向上しており、CCRTにより成績が向上していると考えられる(ただし、急性有害事象も増加していると報告されている)。また、1999年〜2004年にかけて6つの大規模トライアルが行われている(GOG123、SWOG8797、RTOG9001、GOG85、GOG120、NCIC)。これらすべての試験にはCDDPが用いられており、1)早期例を対象に、手術と組み合わせたCCRTの有用性についての調査 2)進行例を対象にRTとCCRTの差、適切な薬剤の決定についての調査 がなされている。1)に関してはRT単独→アジュバント子宮摘出術では3年生存率で74%、CCRT→アジュバント子宮摘出術では83%と有意な差が見られた。2)に関しては、weekly CDDPとCDDP/5FU/HUでは、生存率に有意な差は見られなかった。また、急性有害事象に関してはwekly CDDP < CDDP/5FUであるため、同時併用化学療法としてはweekly cisplatinがよいと考えられる。さらに、本症例のように進行例またはリンパ節転移をきたした症例(b>5cm〜a またはLN positive)を対象にした試験としては、NCIC(カナダ)においてCCRT(weekly CDDP) vs RT(骨盤照射のみ)での対照の臨床試験が行われた。結果としては、前者が62%で後者が58%という結果が得られている。また、CCRTに関する大規模トライアルの生存率の比較(上記GOG85など)でも、CCRTで生存率の向上が見られている。
また、治療に伴う副作用としては、以下のようなものがある。急性期に起こる悪心(放射線宿酔)、下痢、膀胱炎、皮膚炎(特に下方に延長した照射野をとった場合の会陰部)、白血球減少などが起こる。晩発性(grade3以上の頻度)の合併症としては、直腸炎(出血)(5〜10%)、膀胱炎(出血)(5%以下)、小腸障害(腸閉塞)(5%以下)、皮下組織線維化・浮腫(下腹部)、腟粘膜の癒着・潰瘍、膀胱腟瘻、直腸腟瘻、骨折、下肢浮腫などが起こる。対処としては、治療開始2週〜3週に起こる照射や内の腸管におけるダメージのため、水分の吸収低下や下痢が起こっているときには、整腸剤や下痢止めを用いる。晩期有害事象(小腸・直腸障害や膀胱障害)は、一度発生すると根治が困難とされている。
 有害事象に関しては、JROSG婦人科グループにおける研究で調査されている。照射単独とCCRTで比較した場合、白血球減少(RT単独では2.8% vs CCRTで62.5%)、血小板減少(0.6% vs 13.9%)、下痢、頻尿、膀胱炎ではほぼ同率、直腸炎(2.8% vs 4.2%)、小腸大腸イレウス(1.7% vs 6.9%)との結果が得られた。化学療法を併用する場合、明らかに血球減少が起こる率が増加しており、その点に注意する必要がある。現在、血球減少に対して白血球減少抑制剤を投与することで有害事象の軽減の有無をみる臨床試験が行われているなど、有害事象に対する対策が考えられている。