機ダ幻(法について
 PSA値あるいは直腸診、経直腸的前立腺超音波検査により前立腺がんの疑いがある場合、年齢も考慮しながら最終的な診断を行うために前立腺生検が実施される。近年では超音波をガイドにして前立腺を描出しておき、細い針で前立腺を刺し、6ヵ所かそれ以上から組織を採取する系統的生検が一般的(取り扱い規約では、最低6箇所、左右各3箇所と記載されているp.23)1)である。
 指標となるPSA値測定については、タンデムR法が用いられ、PSA値4〜10ng/mlがいわゆるグレーゾーンであり、その場合には25〜30%にがんが発見されている(ただし4ng/ml以下でも前立腺がんが発見されることもあり)。PSA値が10ng/mlを超える場合には50〜80%にがんが発見される。100ng/mlを超える場合には前立腺がんが強く疑われ、さらには転移も疑われる。すなわち、PSA値が4.0〜10.0の範囲では、直腸診断や経直腸エコーなどの補助検査で癌を疑う場合は積極的生検が勧められる。PSA値が10.0を超える場合は、他の検査によらず、原則として生検が勧められる。さらに、血清中のフリーPSAの測定が可能になり、従来の血清PSA測定(トータルPSA:フリーPSAおよびPSA-ACT)に加え測定を実施することにより、前立腺疾患の良性及び悪性を効率的に鑑別できることが示唆されている2)。米国における臨床研究では、フリーPSAとトータルPSAの比(F/T比%)が前立腺癌においては、良性疾患(含む前立腺肥大)に比較し低値を示し、疾患の鑑別に有用であるという報告がされている2)3)。これら検査を用いることで、生検施行時期を決定する。

供ダ幻,鉾爾合併症について
 合併症としては、細菌感染により急性前立腺炎、血尿、麻酔薬によるショックなどがあげられる。だが、現在、比較的痛みのないエコーガイド下バイオプティーガンが用いられており、この手技による合併症のリスクは低いと報告されている。経会陰的エコーガイド下アプローチは、経直腸的アプローチによる合併症のリスクが高い患者に用いることができる。18ゲージ針での生検を実施した男性670人のシリーズにおける合併症発生率は2%であり、入院が必要となった患者はわずか4人であった、と報告されている4)。

掘Gleason grading systemについて
 一般に、腫瘍の分化度および組織学的増殖パターンの異常は、転移の可能性および死亡と直接相関しているとされている。腫瘍の分化度は顕微鏡視野ごとに顕著に変動するため、病理学者の多くは、生検で認められた悪性細胞の分化度の範囲をGleasonの分類により報告することになる。
Gleason分類は数多くの症例を病理学的に検討してできた分類法である。すなわち、Veterans Administration Cooperative Urological Research Group(VACURG)が 1960年から75 年の間の 4000例の前立腺癌症例を集積し、組織的検索が可能であった 2911例を対象に病理組織学的に9つのパターンに分類した。その後の追跡調査の結果に基づいて予後と相関させパターンに順位をつけた。1966年に初めて提唱され、74年および 77年に改定されている。パターンは全部で9 種であったが、予後との関係で 5 段階に分けられた。もっとも優勢な像(最大面積)のパターンと次に多いパターンを合計し、2 から 10 の 9 段階にスコアー化(GS)した。5%以下の腫瘍成分は無視される。米国では最も広く用いられている分類法で、泌尿器科関係の国際誌に論文を投稿する場合は本分類の採用が推奨されている。
 すなわち、Gleason分類は腫瘍細胞の分化度、細胞異型を考慮せず、浸潤パターンや構造異型のみに着目して前立腺癌の形態をパターン1からパターン5の5段階に階層化する方法として考案された。さらに画期的なことは、前立腺癌の組織像の多様性を考慮して量的に最も優位なパターンとそれより劣勢なパターンの数の合計をグリーソンスコア(= Gleason score, Gleason sum)として表現する方法を導入したことである。実際の記載の方法としては、『Gleason score 4+3=7』と表記した場合、pattern 4が優勢型(Primary grade)、pattern 3が従属型(Secondary grade)となり、中分化腺癌の場合にもっともよく認められるスコアである(ただし、Secondary gradeが5%以下なら、Primary gradeを2倍する)。
 Patterns 1-5まであるため、グリーソンスコアは1+1=2から5+5=10まで9段階があるが、針生検の診断ではGleason score 5-10の中にほとんどの腺癌が収斂される(何故なら面積の小さい針生検標本で、構造異型の小さい高分化な腺癌を、過形成にとどまっている前立腺腺房と、HE染色のみで鑑別することは殆ど不可能だからである)。

検Gleason grading systemの問題点および考察について
 Gleason分類の問題点としては、
1)再現性が低く観察者間の不一致率が高い
2)細胞異型を考慮してない 
 という点が挙げられる。観察者間でGleason分類の一致率が低いことは以前から指摘されている5)。米国の報告では、泌尿器病理専門医に比べ、一般病理医は GSを低く評価しがちである。その主な原因は浸潤性の小腺房状癌にある。これは規約分類、あるいは WHO分類では高分化型であるが、GSの場合は一義的には決定されえない。すなわち、周囲との境界が明瞭で、病巣の輪郭が円形で、管腔に大小不同性がみられない場合はパターン 1 であるが、病巣内に正常腺管を巻き込んでいればパターン 3と判定すべきである。この点が他の分化度分類法と根本的に異なっており、全く同様の組織像を示す高分化型腺管であっても、周囲組織との関係により、パターン 1 にも 3 にもなりうる。この結果、GS6とスコア化されるべき症例が、GS2〜4 と低く判定されている場合が多数みられている、などのケースが存在する。
 Gleason scoreは前立腺癌患者の独立した予後因子であり、米国では前立腺生検の報告書に記載することが推奨されている。しかし、再現性が低いのが欠点で、一般病理医は低くスコアー化する傾向があるとされている。年次的に解析すると、Gleason scoreは普及しつつあり、診断の的確性も改善されていると思われる。そこで、より一元的に診断され、的確性をもった診断となりうるためには、Gleason scoreのより一層の普及と基準の擦り合わせが必要であると考えられる。

1)日本病理学会編 泌尿器科・病理 前立腺癌取り扱い規約 2001年4月第3版(金原出版)
2)Catalona W J, et al : JAMA 274 : 1214-1220,1995.
3)Catalona W J, et al : JAMA 279 : 1542-1547,1998.
4)Desmond PM, Clark J, Thompson IM, et al.: Morbidity with contemporary prostate biopsy. J Urol 150 (5 Pt 1): 1425-6, 1993.
5)古里征国, 白井智之, 白石泰三, 小西 登, 他. 10症例における Gleason Grade の検討. 泌尿器外科 1999; 12: 1047-1069.