多くの人に衝撃を与えた日本テレビアナウンサー、大杉君枝さんの突然の訃報。背景には、難病の線維筋痛症による、日常生活に支障をきたすほどの慢性的な激しい痛みがあったといわれている。線維筋痛症に限らず、原因が不明だったり、疾患の治療が終わっても痛みが消えないなどの理由で、慢性的な痛みに悩まされている人は多い。にもかかわらず専門的な治療を受けている人はごくわずか。周囲の理解がなかなか得られず、うつ状態を招く引き金にもなりかねない慢性的な痛みに悩んでいる人もいるという。

問題となるのは、慢性疼痛で悩んでいても、大げさに痛がっていると思われて、周囲の理解が得られないことが多いこと。「原因となる疾患の治療が終了したとか、痛みの原因が分からないことなどから、正しい診断がなされず、診療科をたらい回しにされることもある」と同医長。痛みの辛さに加え、解決しない焦燥感や、経済的負担などからうつ状態に陥いることも。

また、痛みが続くことで、「交感神経の活動が活発になり、心臓など生命維持に重要な場所に盛んに血液を送り込むため、毛細血管が収縮し、血流が悪化。これが原因で代謝異常が起こり、さらに発痛物質が発生する」と同医長。まさに“痛みの悪循環”だ。

慢性的な痛みに悩む患者を専門にして治療を行うのが、ペインクリニック。中でも、神経の圧迫や損傷といった異常によって起こる神経因性の慢性疼痛の緩和には、ペインクリニックの受診が欠かせない。知覚神経系の故障が原因のため、手術で痛みの原因を取り除く整形外科などでは対応できないのだ。

ペインクリニックでの治療には、薬物療法、神経ブロック、脊髄刺激療法などがある。安部医長は、「痛みの悪循環を断ち切り、付き合える程度の痛みにする。痛みをゼロにするのではなく、患者の生活の質を向上させるのが目的。顔面に強い痛みが起こる三叉(さんさ)神経痛など、神経ブロック療法で劇的に痛みが緩和するものもある」と説明する(鬱状態になる前に…220万人が悩む慢性疼痛)。


慢性疼痛とは、腰痛、偏頭痛、関節炎や癌などのために、日常生活に支障を来すような疼痛が、6カ月以上続いている状態です。急性痛は身体への障害の警告としての意味があるが、慢性痛はその意味がなくなった後も続きます。

身体因がない痛みということで、従来「心因性疼痛」といわれてきたことからも分かるとおり、「気のせい」などと思われていた時期もありました。しかし、その後にICD−10(1992)で「持続性身体表現性疼痛障害」という病名に変更されました。

慢性疼痛を持つ患者の多くが精神的な抑鬱状態にあり、家庭生活や職場上でのストレスを経験している慢性疼痛と抑うつはコインの裏表のように密接な関係があるといわれています。

また、患者さんには「慢性疼痛サイクル」といった悪循環が存在していると言われています。

慢性痛患者は痛みに敏感

抑うつ状態になる。

長期間の臥床により筋力低下・スタミナ不足が起こり、負荷に対して筋肉痛を発生しやすい。また、欲求不満から過食→肥満→筋に過負担が起こる。さらに、運動不足が起こる。

疼痛抑制系の機能低下

さらに痛みに過敏になる。

…ということが起こるそうです。

治療としては、根治できるような治療法はありません。
そこで、症状の消失は狙わず、疼痛との共存を図ることを目指します。そして、生活の質を改善するように援助します。その補助として、薬物療法を行います。主に用いられるのは、鎮痛薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬などを用います。

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