大量出血やショック症状など、死に至る可能性のあった妊産婦重症例は、死亡例の70倍以上に上ることが、厚生労働省研究班(主任研究者・中林正雄愛育病院院長)などの全国調査で分かった。日本産科婦人科学会の医療提供体制検討委員会で21日、報告された。
 
日本の妊産婦死亡率は世界で極めて低い水準にあるが、実際には250人に1人の割合で死亡リスクがあることになる。調査に当たった久保隆彦国立成育医療センター医長は「重症例に対応する施設のマンパワー確保や、30分以内に血液供給できる体制整備が必要」としている。

調査は、日本産科婦人科学会の研修指定施設と救急救命センター計約1,000施設を対象に、平成16年の妊産婦死亡や重症例について調べた。
 
333施設から、全出産の約11%に当たる約12万4,600例について回答を得た。このうち、妊産婦死亡は32人。2リットル以上の大量出血や子宮破裂、多臓器不全、ショック症状など、死に至る可能性のあった重症例は2,325人で、死亡例の約73倍だった。

62人が死亡した17年にあてはめると、250人に1人に当たる約4,500人に死の危険があった。
(意外に危険 妊産婦250人に1人死に至る可能性 重傷例は死亡の73倍)



妊娠・出産に伴う合併症としては、上記のような大量出血や子宮破裂、多臓器不全、ショック症状などがあります。とくに、妊娠高血圧症候群、前置胎盤、へその緒の巻絡、大量出血などが問題となって、リスクを伴うことが多いようです。

妊娠高血圧症候群は、妊娠中毒症と言っていたものが2005年4月に呼び名が変わりました。妊婦の約1割弱がかかるものと言われ、妊娠によって血管の内皮細胞が壊れ、血管が硬く狭い状態になる病気とされています。胎児の発育遅延や胎盤がはがれてしまうなどの危険もあり、やはり大量出血などが起こる可能性があり、注意が必要です。

前置胎盤は、紀子妃の出産時にも問題となりましたが、胎盤の子宮腔内の付着部位に異常がある疾患です。妊娠中期から後期にかけて、無痛性で突発的に多量の性器出血をきたし、時には出血性ショックに陥ることもあります。母子ともに生命を脅かす危険性もあり、救急処置を要する疾患です。

…他にも、多くのリスクを背負いながら、出産が行われます。不測の事態にも備えられるよう、産婦人科のマンパワーや施設の充実などが、やはり求められているように思えるニュースでした。

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