95年の地下鉄サリン事件で被害を受けた人たちの脳にサリンの影響で縮小したとみられる形の違いがあることが、東京大病院の助教を務める山末英典医師(精神神経科)らの研究でわかった。被害者の中には、いまでも疲労感や動悸(どうき)といった不調に悩む人が少なくない。こうした後遺症は、実は脳に起きた損傷による可能性が出てきた。

研究グループによると、長期的な後遺症を抱える被害者が、「気のせいだ」などと決めつける周囲の反応に苦しんでいるという。山末さんは「脳に損傷を受けたことがはっきりすれば、被害者の孤立感を減らすことができるかも知れない」とみている。

事件の被害者で筋力低下や頭痛といった急性中毒症状を起こした男女38人に協力してもらった。磁気共鳴断層撮影(MRI)で脳の体積などを調べ、被害を受けていない76人と比べた。

被害者は、左右のこめかみから4〜5センチほど内側にある脳の「島皮質」や「海馬」などの体積が、被害のなかった人より小さかった。

これらの場所の体積の違いで、動悸や息苦しさなど長期的な後遺症の度合いに差があり、サリン中毒の程度を示す血中酵素の低下が激しいほど体積は小さい傾向があった。サリンで損傷を受けたことで痛みや疲れに敏感になり、不調に悩むなどの後遺症につながったと考えられる。

研究グループは以前、事件後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された人たちで、感情の制御にかかわる脳のある部分が小さかったことを報告している。今回は場所が異なり、サリンそのものの化学的影響の可能性があるという。

サリン事件を中心に、犯罪被害者らの支援に取り組む「リカバリー・サポート・センター」(東京都新宿区)は昨年秋、松本サリン事件を含めた被害者約150人を対象に検診を実施。「頭痛がする」と訴えた人が受診者の6割、「目が疲れやすい」とした人は8割にのぼっている。

今後はこうした後遺症に悩む人についての診断法と、治療法の開発につなげていく必要がある。
(サリン被害者の脳「縮小」 不調続く原因か 東大病院)


サリンという名は、開発に携わったシュラーダー (Schrader)、アンブロス (Ambros)、ルドリゲル (Rudriger)、ファン・デル・リンデ (Van der LINde) の名前を取って名付けられた。コリンエステラーゼ阻害剤として作用します。

殺傷能力が非常に強く、経口からだけでなく皮膚からも吸収され、1分も経たずに症状が出る

神経に障害を起こす。自覚症状としては、まず最初に目がちかちかするなどの異常が起こり(縮瞳、瞳孔の収縮)、ついで涙が止まらなくなったり、くしゃみや鼻水など呼吸系の障害が起きる。呼吸困難を伴うこともある。さらに重度の場合、全身痙攣などを引き起こし、最悪の場合死にいたる。50% 致死量 (LD50) は、1 m³あたり 100 mg。毒性は副交感神経の神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する酵素(コリンエステラーゼ)を不可逆的に阻害することによる。

今回の発見が、はたしてこれらの毒性によるものなのか、PTSDなどの強いストレスによるものなのか、判別がついてはいないようですが、被害者の方々が後遺症で苦しまれているのはたしかです。

被害者、ご家族の方々に対する保証や周囲の理解が必要であると思われます。

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