エタノールは環境に優しい、クリーンな自動車燃料として推奨され、日本でも輸入製品が出回り始めたが、手放しで歓迎とはいかないようだ。同製品の広範囲での使用が、将来的に呼吸器疾患による死亡や入院の増加を招くことが、科学誌「Environmental Science & Technology」4月18日オンライン版掲載の米国の研究で指摘されている。
 
米スタンフォード大学(カリフォルニア州)大気科学者のMark Z. Jacobson氏らは、大気状況をミュレーションするコンピュータモデルを用いて、エタノール85%とガソリン15%を混合したE85燃料の車が広範囲で使用された場合の、2020年時点での米国の大気状況を検討。

研究では、E85の使用により、大気中の発癌物質であるベンゼンとブタジエンは減少する一方で、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドは増加。その結果、E85による発癌率はガソリンと同じであることが示された。また、スモッグの主成分であるオゾンが、ロサンゼルスと米北東部で著明に増加するのに対し、南西部では減少。それに伴いオゾン関連の死亡件数がガソリンに比べ年間約200件の割合で増え、うち約120件がロサンゼルスで発生することが示された。

これらの原因による死亡率は、2020年には、ガソリン車に比べ全米で約4%、ロサンゼルスでは9%それぞれ増加すると予測している。またE85は、喘息関連の救急室搬送および入院数を大幅に増加させることも示された。

エタノールの有害性はトウモロコシ、スイッチグラスなど原料を問わない。Jacobson氏は、エタノールはガソリン燃料による汚染と同じくらい有害であるにもかかわらず、なぜバイオ燃料を推奨するのか疑問を投げかけている。米国でのガソリン汚染による早期死亡は毎年約1万件に達している。

Jacobson氏は「風力や太陽光の転換エネルギーで走る電気自動車、プラグインハイブリッド車、液体水素燃料電池車などは、毒性物質やグリーンハウスガスの排出は実質的にゼロで、土地への悪影響もほとんどない。エタノールの原料のトウモロコシやスイッチグラスを大量に生産するには広大な土地を耕す必要がある」と述べている。
(人体への悪影響はガソリンと大差ないエタノール燃料)


アセトアルデヒドは、二日酔いの原因として有名。
多くの生物にとって有害で、アルデヒド基がタンパク質の側鎖のアミノ基と反応を起こし、さらには架橋反応に進むため、これを凝固させる作用を持ちます。それを利用したものに生物学研究におけるホルマリン固定やグルタールアルデヒド固定があります。他にも、ブドウ糖のようなアルドースが、糖尿病において次第に血管のコラーゲンやエラスチン、水晶体のクリスタリンなどといった高寿命タンパク質を蝕み、こうしたタンパク質を多く含む器官に損傷を与えるのも、同じ原理によります。

ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群などでも有名ですね。
人体へは、粘膜への刺激性を中心とした急性毒性があり、蒸気は呼吸器系、目、のどなどの炎症を引き起こす。皮膚や目などが水溶液に接触した場合は、激しい刺激を受け、炎症を生じます。国際がん研究機関によりグループ1の化学物質に指定され、発癌性があると警告されています。

次世代の代替エネルギーとして期待されていますが、エタノールも有害性をもつというような研究結果になってしまったようです。今後は、風力や太陽光の転換エネルギーで走る電気自動車、水素燃料を用いた自動車などが必要となってくるようです。

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