本当は怖い家庭の医学で取り上げられていました。

S・Hさんは、48歳にして中堅証券会社の専務。業界再編の余波を受け、競合他社の合併吸収の大役を一身に担い、瀬戸際の勝負がこの1週間にかかっていました。そんな中、身体のだるさを感じ、熱を測ってみると、37度2分の微熱があったS・Hさん。「このくらいの熱、寝ればすぐに治る」と思っていましたが、実はそれこそ恐怖のカウントダウンが始まったサインだったのです。

微熱に加え、まずは歯磨きをしているときに歯茎から出血しているのが分かりました。ですが、そのときは「よくあること」と気にも留めませんでした。

そして、週末になって、さらなる異変が起こりました。
ふと自分の手をみてみると、手の甲にアザができているのを発見。そのときも「どこかにぶつけたか?」と思うくらいで深刻には受け止めませんでした。

ですがその翌日、ついに自分の体に起こった"異変"をまざまざと感じることになったのです。朝起きて、歯磨きをしているとき、自分の腕が目に入った。

手の甲にあったアザがさらに拡大し、ついには腕全体に広がっている…。
会議があったにもかかわらず、彼は病院へ行くことにした。そこで告げられた病名は、急性前骨髄球性白血病だった。

S・Hさんに起こった症状は、
1)微熱
2)熱が下がらない
3)歯茎から出血
4)覚えのないアザ
5)アザが大きくなる
6)さらに広がるアザ
というものだった。


急性骨髄性白血病とは、白血病の一種で、骨髄系の造血細胞が腫瘍(がん)化し、分化や成熟能を失う疾患です。染色体異常として、15番染色体と17番染色体の相互転座と呼ばれる現象が原因で起こると考えられています。

他の白血病と大きく異なり、白血病の中で最も進行が早く、発症するとわずか1週間で死に至ることもあります。ですが、この病は白血病の中では最も治りやすく、薬による治療で、その7割は完治すると言われています。

治療としては、診断確定後、多くの場合すぐに入院し、複数の抗がん剤を用いての化学療法(寛解導入療法)を行います。 寛解導入療法終了後、状態が落ち着けば地固め療法および強化療法・維持療法を行います。

急性前骨髄球性白血病では、ビタミンA製剤であるオールトランスレチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法が用いられます。

受診のきっかけとなる初期症状としては、
1)出血が止まらない、紫斑ができるなどの止血異常
2)風邪だと思っていたが熱が下がらないなどの感染症
3)頸肩腕痛・全身倦怠感・息切れなどの貧血症状
4)腕にうちみの症状

などがあります。これらがみられたら、ご注意下さい。
このケースでは、S・Hさんは投薬治療で、半年後には仕事に復帰。今は合併の最後の仕上げに邁進する毎日、とのこと。

早期診断、早期治療が命運を分けるようです。

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