ビタミン剤の多量摂取と前立腺がんとの関連について、医学研究者らが調査してる。学術誌Journal of the National Cancer Institute16日付が記事を記載した。

同記事によると、米国のNational Cancer Institute(国立がん研究所)が29万5000人余りの男性を95年から追跡調査した結果、ビタミン剤を週に7回以上摂取する男性は、ビタミンを取らない人に比べ、進行型前立腺がんにかかる人が10万人当たり143.8人対113.4人、また前立腺がんで死亡する人が18.9人対11.4人と有意に多かった。特に家系に前立腺がん病歴のある人により強い関連がみられた。

しかし、一方でビタミン多量摂取と初期あるいは局所的な前立腺がんとの統計的関連は見られなかったことから、その関連性については断定せず、さらなる調査が必要と結論付けている。

ビタミン剤は健康によいというイメージがあるが、進行型の前立腺がんにかかるリスクの可能性が示されたのは皮肉だ。何事も過ぎるは及ばざるごとし、ビタミン剤も取りすぎは避けたほうがよさそうだ。
(ビタミン剤取り過ぎで前立腺がん?)


前立腺癌の決定的な危険因子はいまだ不明ですが、いくつかの有力な危険因子が同定されています。現時点で最も確実な危険因子は遺伝的要因であり、第一度近親者に1人の前立腺癌患者がいた場合、前立腺癌罹患危険率は2倍になります。また、第一度近親者に2人以上の前立腺癌患者がいた場合、前立腺癌罹患危険率は5〜11倍になるそうです。

確実な証拠はないものの、動物性脂肪を摂取する機会の多い西洋風の食事様式が前立腺癌の危険性に関与することが有名です。その他、食品に関しては、豆類・穀物の摂取は前立腺癌罹患率と負の相関関係があり(予防効果)、砂糖、ミルク、油脂に正の相関が示唆されています(危険因子)。また、前立腺癌が男性ホルモン依存性であることから、男性ホルモンは癌の発生に必須です。

こうした特徴があることから、今回の調査のことを考えてみると、「家族歴がある→健康に気を使う→ビタミンを多く摂取する」という人が多かった、とも考えられるのではないでしょうか。つまり、ビタミンを多く摂ったか摂らなかった、ではなく、家族歴が大きな因子となって、関連しているとも考えられるのではないでしょうか(大規模な実験なので、こうした交絡因子も排除はされているとは思いますが)。

他にも、「健康に気を使う人→ヨーグルトなどの乳製品を摂る機会が多い」というような関連も可能性があるのではないでしょうか。

どうもこの調査に関しては、「???」な部分が多いのが気になりますが、ビタミン摂取許容量はしっかりと守った方がよさそうです。とくに、ビタミンA、D、K、Eは脂溶性で、摂りすぎると高脂血症になりかねないこともご注意を。

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