首都圏を中心にはしか(麻疹)が流行し、高校や大学が次々に休校(休講)に追い込まれる状況が続いている。なぜ、高校、大学生など若者に感染が拡大しているのか。

日本では1976年に定期予防接種が導入された。89年春には、はしか、おたふくかぜ、風しんを予防するためのMMR(新三種混合)ワクチンも導入されたが、副作用で死亡したり重度障害を負うケースが相次いだ。接種が中止された93年までの4年間は接種率が落ちた。その後は接種が徹底されつつある。

はしかに詳しい大阪赤十字病院(大阪市)の山本英彦・救急部長は今回の流行が学生や20歳代に目立っている傾向について「当時、接種を控えた世代で流行した可能性はある」と指摘する。

小児科医で作る「はしかゼロ小児科全国協議会」のメンバー、太田文夫医師も「現在の乳幼児はワクチン接種が徹底され、中高年は既にかかって免疫がある人が多い」という。一方、「学生は乳幼児よりも行動範囲が広く、発症初期にも休まないため周囲にうつしやすいのでは」と分析。近年、大きな感染症の流行がなくなり、ウイルスにさらされて免疫を増強する機会が減ったことも原因の一つという。

「大人の方が重い」とよく言われるが、大人が重症になるという研究データはないとされる。だが、太田医師は「大人でも死亡する事例もある。注意が必要」と話す。

はしかは通常、一度かかれば二度とかからない。ただ、一度ワクチンを打っても数%は免疫がつかないとされ、免疫も時間がたつと低下する傾向にある。国立感染症研究所の多屋馨子・第三室長は「免疫の有無は病院で検査できる。なければ急いでワクチンを打ってほしい」と呼び掛ける。
(はしか:若者に感染拡大 予防接種敬遠の世代)


関東南部などで流行中の麻疹の15歳以上の患者が増加し、近年最も流行の規模が大きかった平成13年に迫る勢いであることが国立感染症研究所のまとめで分かっています。10−20歳代が多いのが特徴。感染研は「10代、20代は活動範囲が広く、国内外への拡散が心配」と注意を呼び掛けています。

麻疹・風疹混合ワクチンとは、従来の麻疹・風疹ワクチンを混合し、1回で接種するために使用されるワクチンです。予防接種法改正に伴い、2006年4月から接種が開始された。麻疹(Measles)、風疹(Rubella)の頭文字をとってMRワクチンともいいます。

1988年から、麻疹・流行性耳下腺炎・風疹混合ワクチン(新三種混合ワクチン、MMRワクチン)の接種が認められた。しかし、ムンプスワクチンによる無菌性髄膜炎の発症率が「予想外に高く」、重度障害者を発生させ、政府に賠償責任が生じたこともあってか、1993年にはMMRワクチンの接種は中止されました。

ですが、2006年4月以降、新規にワクチンを接種する1歳以上2歳未満の幼児からは、麻疹・風疹混合ワクチンを接種することが可能となりました。

接種スケジュールとしては、以下のようになっています。
1回目:月齢12〜23ヶ月
2回目:小学校入学前の1年間

2回目の麻疹・風疹混合ワクチンの接種を受けることができる者は、1回目の接種を混合ワクチンで受けた者、とも規定されています(1回目を麻疹ワクチン、風疹ワクチン別個に受けているものは、現行法では2回目の接種の対象にならない)。2006年6月2日の予防接種法施行令の再度改正により、1回目を単抗原ワクチンで別個に受けたものも、2期の対象に加わっています。

もちろん、副作用についてはしっかりと認識すべきですが、こうした流行があったことからも、ワクチン接種は必要であると考えられます。心配な方は、病院へ一度相談しに行ってはいかがでしょうか。

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