金沢大病院(金沢市)が昨年5月に実施した脳死臓器移植で、脳死判定に必要な脳波の測定データが規定通りに保管されていないことが厚労省の調べで分かった。データは臓器移植法施行規則で5年間の保管が義務付けられており、保管されていなかったり作成されていなかったりした場合は規則違反に当たる。

脳波をはじめ脳死判定にかかわるデータは、専門家による検証ができるよう、すべての事例で保管が義務付けられている。今年4月、厚労省が検証のためデータ提出を同病院に求めたところ、脳波測定データだけが提出されなかった。病院側は荷物の移動などで現在、見当たらないため探している、などと釈明しているという。
(脳死判定:必要な脳波データ保管せず 金沢大病院で判明)


臓器移植などの目的で脳死を法的に示す必要のある場合は手順に則った脳死判定が行われます。このような目的がないときに、脳死判定をすることはできません。なぜなら、判定基準は呼吸器を外して自発呼吸を確認するなど患者を死亡させかねない項目を含んでいるからです。

なお、日本国における法的な脳死の定義については「臓器の移植に関する法律」第6条の規定によります。同法による臓器移植による脳死判断の初適応は1999年2月28日となっています。

脳死判定は移植に関係のない、脳死判定の経験のある2名以上の医師で行い、6時間後にも同所見であることが必要です。なお、脳死判定に先立って臨床的脳死判定する場合は、以下の1〜4を確認します。
1.深昏睡(JCS300またはGCS3)である。
2.瞳孔固定 両側4mm以上。
3.脳幹反射(対光反射、角膜反射、網様体脊髄反射、眼球頭反射、前庭反射、咽頭反射、咳嗽反射)の消失。→よって失明、鼓膜損傷などでこれらが施行できない場合は脳死判定はできない。
4.平坦脳波(刺激を加えても最低4導出で30分以上平坦)
5.自発呼吸の消失(100%酸素で飽和したのち呼吸器を外し、動脈血中二酸化炭素分圧が60mmHg以上に上昇することを確認。脳に影響を与えるため、必ず最後に実施する。)


なお、2回目の判定が終了した時刻を死亡時刻とします。

人の死を判定するという非常に重要な事柄を記したデータを、紛失したとなれば一大事です。電子化するなど、データ保管のありようをもう一度見直す時期に来ているのかも知れません。

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