高齢者に多い骨粗しょう症の発症メカニズムを、国立長寿医療センター(愛知県大府市)の池田恭治・運動器疾患研究部長らのチームが細胞レベルで解明した。骨粗しょう症の予防薬や治療薬の開発につながる研究成果として注目を集めそうだ。米科学誌「セル・メタボリズム」(電子版)で報告された。

池田部長と辰巳佐和子研究員らは、骨の中に含まれる「骨細胞」の働きを調べるため、骨細胞だけを死滅させる毒素を、マウスに注射した。その結果、骨を溶かす「破骨細胞」の働きが強まる一方、骨を作る「骨芽細胞」の働きが弱まり、マウスは約1か月で骨粗しょう症になった。

骨細胞は、骨芽細胞が骨を作った後に変化した細胞で、これまでその機能が不明だった。研究チームは実験結果から、骨の再生にかかわる細胞の働きをコントロールする、大本の「司令塔」であると判断した。
(骨粗しょう症発症のメカニズム解明…国立長寿医療センター)


骨粗鬆症とは、骨形成速度よりも骨吸収速度が高いことにより、骨に小さな穴が多発する症状をいいます。背中が曲がることで現れる骨の変形、骨性の痛み、さらに骨折の原因となります。

骨折は一般に強い外力が加わった場合に起こるが、骨粗鬆症においては、日常生活程度の負荷によって骨折を引き起こします。骨折による痛みや障害はもちろん、大腿骨や股関節の骨折はいわゆる高齢者の寝たきりにつながり、生活の質 (QOL) を著しく低くすることになってしまいます。こうした観点から、骨粗鬆症対策は、高齢者医療にとって非常に重要な項目でもあります。

骨は建築物に用いられる鉄骨などとは異なり、常に骨芽細胞と破骨細胞によって、形成、吸収のバランスが保たれています。骨芽細胞は骨形成を、破骨細胞は骨破壊を行っています。このバランスが崩れることで、骨粗鬆症になってしまいます。

今回の結果では、骨細胞(骨芽細胞が骨を作った後に変化した細胞)が司令塔となり、骨芽細胞や破骨細胞の活動バランスをコントロールすることが分かったようです。この点を臨床的に制御できれば、カルシウム剤やビタミンD補充による治療よりも、より効果的な治療ができるのではないでしょうか。

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