「酔いがさめる」をうたい文句に国の承認を受けていない医薬品をインターネットで広告・販売したとして、薬事法違反の罪に問われた広島市南区の健康食品販売会社「タイニック」社長豊口澄江被告(71)の判決が11日、広島地裁であった。奥田哲也裁判官は「健康食品にすぎない商品をあたかも医薬品の効能効果を有するかのように誇大広告し、無許可販売した影響や結果は重大」として懲役1年執行猶予4年、罰金50万円(求刑懲役1年、罰金50万円)を言い渡した。

判決によると、豊口被告は06年4月から12月にかけて、国の製造承認を受けていない医薬品「スーパー酔さめα」「しらふサラサラ」を「10粒で血液中に残ったアルコールが分解され、10分でしらふになります」などと、インターネットで広告。同年、20人に対し、約25万円で販売した。
(「酔いざめ」うたい未承認薬ネット販売 社長に有罪判決)


この「酔い醒め薬」の存在は、探偵ファイルで取り上げられていた記事を読んで知りました。その時も、「アルコールを分解?どんな機序で?何が入ってるの?」と不思議に思っていました。

謳い文句は、以下のようなものだったようです。
"血液中に入ったアルコールを限りなくゼロに近づけてくれ、みるみる酔いがさめていく"

…そんなことができれば、ノーベル賞ものだし、少なくともこの世から飲酒運転がなくなってしまうような発明でしょう。

そもそも、アルコールを摂取すると、体内でアルコールはアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに分解されます。さらにアセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素により酢酸へと分解され、最終的には水と二酸化炭素に分解されることにより体外へと排出されます。

お酒に強い人は、この一連の代謝が早いのですが、一方で私を含め、下戸の人はこの代謝が遅い(アセトアルデヒドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素の活性型の変異がある)ワケです。

一般に「酔っている」という状態は、大きく分けて「アルコールに含まれるエチルアルコールが脳の機能を抑制する事によって引き起こされる酒酔い」と、「体内でのアルコール代謝の中間生成物であるアセトアルデヒドの作用によって引き起こされる酒酔い」との二種類があります。

前者は、飲酒によってエチルアルコールを摂取すると、摂取した量に応じ脳が抑制され、酒酔いとなります。結果、脳の麻痺はまず大脳の高位機能の麻痺から始まるため判断力、集中力、抑止力等が低下します。そうすると、お酒の席での"苦い失敗"をしでかしてしまうわけです。

後者は、アセトアルデヒドが血中に蓄積されると心拍数の増加、嘔吐、皮膚の紅潮などの状態が引き起こされ、酔った状態となります。二日酔いの原因ともいわれています。

「こうしたものが分解されるとは…どういったことで?」と不思議に思ったものです。たしかに、こうした細胞内で起こる代謝をサポートするため、飲んだ後にクエン酸を摂ると良い、などと言いますが、それでも「酔い覚め効果」には効果的とはいえません。

コーヒーを飲んだとしても、血中アルコール濃度は変わらないそうです。酔いが完全に醒めるまでには、個人差がありますが、8時間ほどかかるとされています。「もう酔いは醒めた」と思われても、飲酒運転になってしまう可能性があります。ご注意下さい。

【関連記事】
「飲んでないのに…」パイロットが飲酒疑惑をもたれたワケ

頭痛、ムカツキ、吐き気…二日酔いとその対処法