2006年の1年間に、企業で30日を超えて休業した従業員の63%は鬱病・自律神経失調症を中心としたメンタル疾患だった。アドバンテッジ リスク マネジメント(ARM、東京都目黒区)が、企業向けに提供している長期保険のGLTD(団体長期生涯所得補償保険)を使って30日以上休業したケースを調査した結果、メンタル疾患が半数を超えていたことが分かった。

さかのぼって調査した2000年はメンタル疾患の割合は36%の水準にとどまっており、7年間で1・75倍の比率に上昇した。06年までの7年間のトータルでも、メンタル疾患で長期休業した割合は49・4%とほぼ半数を占め、休業原因のトップとなり、“気の病”が引き起こすメンタル疾患が企業で働く人の身体をむしばんでいることを裏付けた。
 
調査はARMが06年12月までに、ケガや疾病などの就業傷害を理由に30日以上休業したケースのうち700例(男性465例、女性235例)を無作為に抽出し、00年1月までさかのぼって、毎年100例の発生状況を調べた。この結果、メンタル疾患を原因とする長期休業の割合は年々上昇し、03年に46%、04年に58%と初めて50%のラインを超え、05年には62%まで高まった。男女別にメンタル疾患の発症状況を7年間のトータルで比べると、男性は30歳代以降の働き盛りでの発症が77・5%だったのに対し、女性は20代の発症が55・4%と極めて高い数値を示した。

男性のメンタル疾患の割合が30代以降で高いのは、中間管理職として上下からのストレスがたまりやすい年代であることが原因とみられ、20代の女性に多いのは結婚・育児と職業生活の両立が難しいことが考えられる。
 
この調査結果について、職場のメンタル疾患に詳しい精神科医で社団法人、日本精神保健福祉連盟の大西守常務理事は、企業が長引いた不況の過程で成果主義の導入を進めた結果、従業員一人一人に求められる責任が増加していることを指摘している。企業に「メンタルヘルス環境向上に向け、EAP(従業員支援プログラム)などのメンタル疾患予防プログラムなどの取り組みが求められる」と話している。
(企業に広がる心の病 鬱病など7年で1.75倍)


「うつ状態」と一言でいっても、性質によって以下のように分類することが出来ます。
・一過性の心理的なストレスに起因するもの
・統合失調症・パニック障害など、他の疾患の症状としてのもの
・季節や生体リズムなど、身体の内部の変調によって生じるもの(内因性うつ病)
今回の記事のようなケースでは、心理的なストレスが大きな原因となっていることが分かります。

うつ病の症状としては、2つの主要症状が基本となります。それは「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」です。

「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどです。「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態です。この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされています。

さらにこれらの精神症状に加えて「身体的症状」として、食欲、体重、睡眠、身体的活動性の4つの領域で、顕著な減少または増加が生じます。訴えとしては「食欲がなく体重も減り、眠れなくて、いらいらしてじっとしていれない」もしくは「変に食欲が出て食べ過ぎになり、いつも眠たく寝てばかりいて、体を動かせない」というものです。

中高年の自殺率が依然、高いということを鑑みると、こうした「シグナル」に周囲が注意してあげる、ということが重要なようです。

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