米国で17歳の陸上選手が筋肉痛を和らげるクリーム剤Bengayの過剰使用によって死亡したとするニューヨーク市検視局の結論を受け、市販(OTC)薬の危険性について警告する声が高まっている。
 
AP通信によると、死亡した高校生はサルチル酸メチルを含有する複数の市販薬を併用していたという。サルチル酸メチルはBengayをはじめ、タイガーバームなど一般的な塗り薬の有効成分で、アスピリンに似た抗炎症作用をもつ。高用量サリチル酸を含む抗凝固薬には、内出血、不整脈、肝障害などの副作用がみられる。

しかし、「Bengayは米国で100年以上も前から親しまれている製品であり、飲み薬ではなく塗り薬であることからも、危険性が忘れられがちである」と米Ruskリハビリテーション医療研究所(ニューヨーク)のGerard Varlotta博士は指摘。2005年の統計によれば、米国で何らかの毒性物質への皮膚曝露により死亡した例は14例だが、局所薬は毒物曝露の原因の第7位で、2005年に約11万件報告されている。

Bengayの製造元であるジョンソン・エンド・ジョンソン社はAP通信に対し、同製品は指示を守って使用すれば安全で、今回の死亡例は極めて稀なケースと述べているが、Varlotta氏は、警告をもっとわかりやすく表示するべきだと指摘している。市販薬は外箱をみても表示がわかりにくいものが多い。

また、消費者の多くは、異なる市販薬に同じ薬剤が入っていることに気付きにくい。頭痛にアセトアミノフェンを服用しながら、同薬を含む風邪薬を併用するのも、よくみられる誤りだという。単にラベルの指示を守るだけではなく、複数の製品を併用したり使用量を増やしたりしないことが重要。
(市販薬の筋肉痛用クリームで死亡例)


アスピリンや類似した薬(サリチル酸塩)は、過剰に摂取すると急速に中毒を起こすことがあります。しかし急性の中毒は、きわめて大量に服用した場合のみに起こります。体重約70キログラムの人の場合は、325ミリグラムの錠剤を1回30錠服用しても、軽い中毒を起こすだけとのこと。

しかし、今回のケースのように、意図せずにごく少量を繰り返し服用することで徐々に進行してくることがあるようです。とくに、アスピリン中毒は子供で起こりやすいようです。熱が出たからといって、処方された量より若干多めに数日間服用させた場合に中毒を起こすことがあるようです。

急性では、まず吐き気と嘔吐がみられることが多く、続いて呼吸が早くなる、耳鳴り、発汗といった症状が続き、発熱することもあります。中毒が重症の場合には立ちくらみ、眠気、錯乱、けいれん発作、呼吸困難が起こってしまうそうです。

慢性的に進行した場合、眠気、錯乱、幻覚が最も多くみられます。呼吸が速くなり、ふらつき、息切れが起こることもあるそうです。

外用薬といえど、複数のものを使っている場合、こうした成分が過剰にならないように気をつけた方がよさそうです。

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