名古屋市は、がんを切らずに治す粒子線治療施設を、同市北区で2010年度完成を目指す総合医療エリア「クオリティライフ21城北」の敷地内に建設する。松原武久市長が22日の市議会一般質問で表明した。最新の粒子線治療ができる施設は国内に6カ所しなかく、東海3県では初めてとなる。

粒子線治療は、水素や炭素などの原子核を高速に加速した粒子線を、がん細胞にピンポイントで照射し、破壊する。従来の放射線治療などと比べると臓器への負担や副作用が少なく、手術が困難ながん患者にも治療の道を開くと期待されている。治療法には陽子線と炭素線の2種類があり、市は今回、陽子線を導入する。建設費は85億〜100億円を見込んでいる。

治療費は1回あたり約300万円と高額で保険の適用外だが、専門家らでつくる市の検討委員会が今年2月、「施設導入の社会的意義や必要性は極めて大きい」と提言していた。

クオリティライフ21城北は、北区の志賀公園に隣接する約5万平方メートルに総合病院や障害者支援施設、健康増進支援施設などを整備する。
(がん:切らずに治す粒子線治療施設設置へ 名古屋市)


粒子線は、そのエネルギーによって人体内に入る深さ(飛程と呼びます)が定まり、その飛程の近くでエネルギーを急激に放出して止まります。この現象はブラッグ・ピークと呼ばれています。

加速器を用いて粒子のエネルギーを調節し、腫瘍の部分で粒子が止まるようにすれば、ブラッグ・ピークを利用して体表面から照射の道筋にある正常な細胞にあまり影響を与えず、腫瘍細胞だけをねらい打ちすることができます。また、表層の正常な細胞を傷つける恐れが少ないので、照射する線量を上げることができるわけです。

現在、一般的に放射線治療で用いられているガンマ線などは、ダラダラとエネルギーを放出していくので、正常細胞を傷つけてしまう恐れがあり、副作用や十分に照射できないこともあるわけです。

「建設費は85億〜100億円」とのことなので、おいそれと建設することはできないでしょうが、治療効果が高いため、今後広まっていくだろうと考えられています。

【関連記事】
抗がん剤の効き目高める技術とは

PET検査にて初期肺癌と判明した筑紫哲也さん