小腸から栄養素を細胞に送り込むトランスポーターなどの分布を決めているたんぱく質を、群馬大生体調節研究所などのグループが突き止めた。生後間もなく栄養が吸収できなくなる病気の治療への応用や、同たんぱく質の機能調整で栄養吸収を抑制し肥満改善に役立つ可能性があるという。研究成果は28日、英科学誌「ネイチャー」電子版に掲載される。

小腸から栄養素を細胞に送り込むトランスポーター(たんぱく質)や酵素は小腸内壁に集中して分布している。一方、分布を決めている物質は特定されていなかった。

同グループの実験では複数の候補物質のうち「ラブ8」というたんぱく質をなくしたマウスが栄養失調になり、生後3〜4週間で死んだ。このことから「ラブ8」を失うと、小腸内壁に集中分布するトランスポーターや酵素が細胞内部にとどまったまま機能せず、糖分やアミノ酸をほとんど吸収しなくなった。

同グループは、ラブ8の機能を抑える薬品を開発できれば、肥満改善に役立つと期待している。
(たんぱく質:栄養吸収仕組み、群馬大など解明 肥満改善に期待)


消化器は、十二指腸(約30cm)、空腸(約250cm)、回腸(約350cm)からなり、全長は6m以上に達する消化管です。十二指腸は固定されていますが、他の空腸・回腸はかなり自由に動く事ができます。

肝臓からの胆汁や、すい臓からの酵素は十二指腸へ分泌され、消化反応の大部分はここで行われます。小腸の内壁は輪状のひだになっており、その表面には数百万もの絨毛と呼ばれる指状の突起があり(柔突起)、これが小腸の表面積を増大させ、吸収に役立っていると考えられます。

ラブ8(Rab8)が減少すると、小腸内壁細胞の絨毛が萎縮する先天性疾病「微絨毛萎縮症」とよく似た症状がでてくるようです。微絨毛萎縮症は、細胞表面の微絨毛が萎縮を起こすために栄養が十分に吸収できず、出生直後に下痢をおこし、脱水と栄養失調を呈する栄養吸収障害性の疾患です。今回の発見により、微絨毛萎縮症の病態解明や、治療法の考案に役立つかも知れません。

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