内科医などの一般医と精神科医が連携する動きが出てきた。自殺との関連も指摘される鬱病などの「心の病」だが、初期は不眠や頭痛など身体的な症状が目立つことが多く、一般医を転々とする人も少なくないからだ。初期診療(プライマリーケア)段階で病気の兆候を見つけて早期治療につなげようと、自治体と医師会などがさまざまな取り組みを始めている。

東京都内のメーカーに勤務する営業職の女性(32)は頭痛やめまいを覚えるようになってから約1年、内科や耳鼻科、脳神経外科などを転々とする日々を過ごした。原因は分からず症状も改善しない。そのうち仕事の作業効率や集中力が目に見えて落ちたため、精神科の神田東クリニック(東京)を訪れた。診断結果は鬱病。聞けば、「上司との人間関係でストレスを抱き、会議中じっと座っていられないこともあった」という。

「こうしたケースは珍しくはない。鬱症状があっても直接精神科を訪れる人は少ないのが実情」と島悟院長は話す。

心療内科医の三木治氏が、心療内科を受診して鬱病と診断された患者330例を調べたところ、最初に訪れた診療科は内科が64・7%で最も多く、婦人科9・5%、脳外科8・4%が続いた。精神科、心療内科はそれぞれ5・6%、3・8%にとどまった。

鬱病は気分の落ち込みや意欲の低下といった精神的な症状に加え、不眠や息切れなどの身体症状を伴う。「鬱病初期は精神症状より身体症状が前面に出る場合が多いうえに、精神科の受診に抵抗がある患者も少なくない」(都内の精神科医)ことが、内科受診率の高さにつながるようだ。

不眠は鬱の典型的な身体症状の一つとされる。製薬会社グラクソ・スミスクラインが平成18年、20〜50代の睡眠薬服用者308人を調査したところ、鬱症状に該当した人の割合は36・7%に上った。

一方で、鬱症状該当者のうち、睡眠薬の服用を始めたときに「自分のことを鬱かもしれないと感じた」人は66・6%に上ったものの、そのうち44・9%は、不眠以外の精神面の不調については医師と相談したことがないと回答していた。
(心の病、早期治療のために 連携進む医療現場)


コンサルテーション・リエゾン精神医学とは、精神疾患を合併している他科の患者についての相談を受けたり、他科での治療に際して医療者と患者間の連絡を円滑化する作業をいいます。

上記の通り、うつ病患者さんが内科などに訪れたりした場合や、癌患者がうつ症状を呈し始めた際などに、内科医師などが精神科に相談することがあるようです。また、最近では、「鬱病の早期紹介システム」の設立や精神科での研修が行われるケースがあるようです。

『最初に訪れた診療科は内科が64.7%で最も多く、婦人科9.5%、脳外科8.4%が続いた。精神科、心療内科はそれぞれ5.6%、3.8%』とのことで、最初から「自分はうつ病なんじゃないか?」と思って精神科や心療内科にいく人は少ないようです。

最初の徴候としては、「落ち込みや意欲の低下といった精神的な症状に加え、不眠や息切れなどの身体症状を伴う」とのことなので、「最近、眠れない…眠りが浅い」などという症状が出てきたら、安易に睡眠薬や睡眠導入剤に手を出すのではなく、一度、精神科などに相談なさった方がよさそうです。敷居は下がってきているとはいえ、うつ病の認識や知識は、まだ広まっているとは言いづらい様子と思われます。

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