治療薬のエンテカビルを製造・販売しているブリストル・マイヤーズ社が、エンテカビルとアデフォビルの併用治療に関して、今秋から治験に乗り出す方針を示しているとの情報が、保険適用外で併用治療を実施している医師から寄せられた。

ブリストル・マイヤーズ社が、へプセラ社やグラクソ・ウェルカル社が製造・販売しているアドフォビルという薬を自前で用意して、エンテカビルとアドフォビルの併用治療を行うのだという。
 
遺伝子解析が専門のHRI(肝炎研究所)の星野博美所長らが、エンテカビルでも効果が得られにくいB型肝炎患者にアデフォビルを併用することで、「血中からウイルスそのものを消失させる確率を高め、服薬を中止することも期待できる」と話していることから、ブリストル・マイヤーズ社の治験の結果が、期待される。
 
今夏に厚生労働省の倫理審査委員会にかけ、認可を得てから併用治験を始める予定だという。
(製薬会社が薬剤併用を治験へ)


B型肝炎とは、ウィルス性感染の一種であり、B型肝炎ウイルスが原因の肝臓の炎症性疾患のことを指します。急性に発症する急性肝炎、肝の炎症が一定期間以上持続する慢性肝炎、急性肝炎の劇症化した劇症肝炎に分けられます。

B型は、血液媒介、親子(垂直感染)、性行為(水平感染)による感染経路があります。
成人が初めてHBVに感染した場合、そのほとんどは一過性の感染で治癒し、臨床的には終生免疫を獲得し、再び感染することはないといわれています。HBVの一過性感染を受けた人の多くは自覚症状がないまま治癒し(不顕性感染)、一部の人が急性肝炎を発症(顕性感染)します。また、急性肝炎を発症した場合、稀に劇症化することがあります。

HBVのキャリアのうち、10〜15%が慢性肝炎を発症するといわれています。慢性肝炎が進展し、肝臓の線維化がすすんだ状態が肝硬変で、このような人の肝臓には肝癌が発生することがあります(ただし、肝硬変になっていなくても肝癌が発生することもあります)。

症状としては、急性肝炎の場合、全身の倦怠感に引き続き食欲不振、悪心、嘔吐などの症状が現われ、これに引き続いて黄疸が出現することがあります。また、肝臓の腫大がみられることもあります。ですが、不顕性感染の場合、症状が出ない場合もあります。持続感染の場合は、症状が出なくても慢性肝炎が潜んでいていることがあり、注意が必要な場合があります。

治療としては、大きく分けて、肝庇護療法、抗ウイルス療法、免疫療法があります。
肝庇護療法は、破壊されるのを防ぎ、肝機能を改善させることを目的とした治療法です。グリチルリチン製剤の静注、胆汁酸製剤の内服などを行います。
抗ウイルス療法は、ウィルス事態を叩く治療法です。インターフェロン療法、インターフェロンと副腎皮質ステロイドホルモンの併用療法、ラミブジン内服などがあります。
免疫療法は、免疫能を増強させてウイルスの感染や増殖を抑制しようとする治療法です。副腎皮質ステロイドホルモン離脱療法、プロパゲルニウム製剤内服などがあります。副腎皮質ステロイドホルモン離脱療法とは、ステロイドを使用することで一時的に体の免疫機能を低下させ、その後、使用を急に中止することで人本来の免疫力を一気に活性化させ、B型肝炎ウイルス(HBV)を攻撃する治療法です。

B型肝炎の併用療法においては、エンテカビルとアデフォビルが用いられています。

エンテカビルは抗ウイルス効果の高い第3の抗HBV薬です。ヌクレオシド系逆転写酵素阻害作用を有する抗ウイルス薬であり、B型肝炎ウイルス(HBV)の増殖を抑制する経口製剤です。アデフォビルも、同様にヌクレオチド逆転写酵素阻害薬です。

エンテカビルは、アデフォビルよりB型肝炎治療薬として強力で、耐性株も出現しにくいとされています。ですが、単剤では効果が得られにくい患者さんや、血中からウイルスそのものを消失させる確率を高め、服薬を中止することも期待できるといった効果を狙って、併用療法が治験に掛けられるようです。

たしかに、副作用などの出現確率や強さは増えるかも知れませんが、より大きな効果を得ることが出来るかも知れません。結果、肝硬変や肝癌の発生率を下げることができることも期待できます。治験データの解析がまたれます。

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