チーム低迷とともに前半戦、今ひとつ調子のあがらなかったヤンキースの松井秀喜選手。不調の影でささやかれているのが「不眠症」だ。不眠症といえば、ゴジラだけでない。今や日本人の5人に1人が悩まされている国民病でもある。

「最近、よく眠れないんです。早朝に必ず目が覚めて、その後、眠れなくなってしまう」試合後、不眠症であることを告白した松井。
 
不眠症とひと言で言っても「入眠障害」、寝てから何度も目が覚める「中途覚醒」、早朝に目が覚めて眠れない「早朝覚醒」、眠った気がしない「熟眠感欠如」の4タイプある。松井は恐らく「早朝覚醒」タイプか。一般的に多いのは「入眠障害」だ。ここぞとばかりの大仕事の前夜や何か気がかりな心配事や悩み事があると、翌日の調子を考え「早く寝なければ」と思えば思うほど余計眠れなくなってしまう。
 
こうした症状の改善に市販薬を用いるというのは今、最もポピュラーな方法だ。実際、ここ数年で睡眠改善薬は急速に売り上げを拡大。初年度の売り上げ目標6億円をたったひと月で達成した「ドリエル」(エスエス製薬)を筆頭に、この春から新薬の発売解除に伴い「ナイトール」(グラクソ・スミスクライン)、「ネオディ」(大正製薬)など続々と他社も参入。大衆薬が伸び悩む中、睡眠改善薬市場だけは異様な活況ぶりだ。
 
医師の処方なしで薬局で気軽に買える上、病院の処方薬より作用が弱く、常用しても身体的な依存を起こす心配がない点などが人気の秘密。だが、こうした“市販薬依存”の風潮は重大な病気の発見を見落としかねないので注意した方がいい、と専門医は警鐘を鳴らす。「入眠障害はうつの症状の一つでもある。昼間の不調が不眠症のせいだと思い込んでいる人は結構多い。この場合、うつの治療をしなければ睡眠改善薬などの薬を飲んで眠れていても何の解決にもならない」と話すのは精神科・心療内科「クリニック西川」の西川嘉伸院長。
(日本人5人に1人、ゴジラも悩んだ不眠症)


不眠症とは、平常時と比較して睡眠時間が短くなり、身体や精神に不調が現れる病気である。睡眠障害の一種です。上記の通り、
1. 入眠障害:寝つきが悪く、なかなか眠れない。
2. 中途覚醒:朝起きる時間までに、何度も目が覚める。中高年に多い。
3. 早朝覚醒:朝早く目覚めてしまい、再度眠ることが出来ない。
4. 熟眠障害:十分に睡眠時間はとっているが、眠りが浅く熟眠感が得られない。
この4つに分けられます。

松井選手の場合は、早朝に目が覚めて、その後、眠れない「中途(早朝)覚醒」にあたります。実はこの中途(早朝)覚醒は、うつ病にみられることがあります。早朝に目が覚め、朝までうつらうつらして、疲れが取れず、昼間に気持ちの落ち込みやだるさがある、といったことが続いてしまうことがあります。他には、睡眠時無呼吸症候群なども原因になってしまうことがあるようです。

治療法としては、薬物療法として、睡眠導入剤が用いられます。ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤が多く処方されているようです。睡眠導入剤は、化学構造によりベンゾジアゼピン系、チエノジアゼピン系、バルビツール酸系、シクロピロロン系や抗ヒスタミン薬などに分類されます。また、作用時間による分類としては、超短時間作用型、短時間作用型、中時間作用型、長時間作用型などがあります。

「寝付きが悪い」という方(1回、寝てしまえば寝られる)には、超短時間作用型であるトリアゾラムなどが用いられます。中途覚醒が起こってしまう場合は、中〜長時間作用型が用いられるわけです。

注意していただきたいのは、自己判断で睡眠導入剤を飲んでしまったり、止めてしまったり、量の増減をしたりなさらないでいただきたい、ということです。突然の服薬中断では、数日間にわたり元来よりひどい不眠(反跳性不眠といいます)が生じる可能性があります。アルコールと一緒に服用すると、効果増強されてしまう恐れがあるので、止めた方が良いと考えられます。

うつ病などの病気が背景に隠されている恐れがありますので、たかが「不眠症」とあなどらず、自己判断で安易に睡眠導入剤に手を出す前に一度、病院を訪れられてはいかがでしょうか。

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