東京大学医科学研究所の研究から生まれたベンチャー企業、テラ株式会社(東京都港区、矢崎雄一郎社長)が開発した「がん樹状細胞療法」を、最新の放射線治療設備を使ったがん治療に取り組んでいる医療法人北斗の北斗病院(北海道帯広市)が導入した。

樹状細胞療法は、免疫細胞を活性化させ、がんをたたく免疫療法の一つ。患者から採った樹状細胞を治療対象のがんを攻撃するよう覚えさせたうえで培養して患者の体に戻すため、「オーダーメードのがんワクチン」と例えられる。東大医科研などで実証された治療技術を同社が発展させた。

免疫療法は、手術(外科療法)、抗がん剤(化学療法)、放射線療法に続く、第4のがん治療法として、さまざまな機関が研究開発にしのぎを削っている。

北斗病院は「樹状細胞療法は放射線治療と併用すると、いっそうの治療効果が期待できる。テラとの事業提携でノウハウを導入し、今月から治療に使える態勢が整った」としている。テラの矢崎社長は「将来的には保険適用され、さらに一般的な治療になるよう目指したい」と話している。
(オーダーメードのがんワクチン導入 患者自身の細胞に“攻撃指令”)


免疫療法とは、身体が自然に有している疾患への防御機構への働きかけをコンセプトにしている治療法です。通常は、局所あるいは全身の免疫系を賦活させることで治療します。

免疫療法は、がん治療において最も研究が盛んな領域で、新しい治療法が見出されるものと期待されています。その目標としては、免疫機構を刺激することで、患者の免疫系が腫瘍細胞を攻撃させるすることに基づき、疾病を治療する、というものです。

多くの種類の腫瘍細胞は、癌の初期において自己の免疫系に大なり小なり寛容になっています。というのも、腫瘍細胞は元々、患者自身の細胞であり、細胞の増殖、分裂、浸潤が患者の制御下にないということが違うだけだからです。

ですが、多くの腫瘍細胞は、免疫系によって認識されることができる腫瘍特異的な抗原(例えば胎児性抗原)を提示しています。そこをターゲットとして、免疫機序によって叩こう、というわけです。

すでに実用化され、臨床応用されているものもあります。ハーセプチンはErbB2に対する抗体であり、乳癌の第一世代の免疫療法に用いられた薬剤の一つです。 他にも、レミケードと呼ばれる抗体(腫瘍壊死因子に対する抗体)は関節リウマチなど他の疾患の免疫療法にも応用されています。

ですが、日本で広く行われている活性リンパ球療法、丸山ワクチンなどは確固とした抗腫瘍効果が証明されたことはなく、特に進行がんでの延命効果などは人間レベルではきちんとした症例報告があまりないようです。過大な期待を煽るような広告には、ご注意いただきたいと思います。

今後、こうした免疫治療や遺伝子治療が第一選択になり、「切らずに治す」ということが可能になれば、と期待されます。

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