医療用加工食品メーカーのニュートリー(三重県四日市市)は、脳卒中の後遺症などで飲食物を飲み込めなくなった「嚥下障害」の高齢者向けに、食材が円滑にのどを流れるか事前にチェックできる試験器を開発した。病院や介護施設などに無償配布を始めており、高い効果を確認できれば在宅介護を行う一般家庭向けに試験器を販売していく。

嚥下障害の高齢者の間では、ミキサーにかけた食材を口からとる際に食べ物がのどに残ってむせたり、気管を痛める事故が後を絶たない。とろみ食やゼリー食を作るニュートリーは、実際に口に入れる前に、食材がのどを通りやすいかどうか簡単に調べられる器具の必要性を痛感し、今回の試験器を開発した。

試験器は、「落下式簡易咽頭モデル」と名付けたアクリル製の板だ。長さ約28センチで、調理場やベッドサイドなどで気軽に扱える。上部には、食道に食べ物を送る際に気管を閉じる「喉頭蓋を模した突起などをつけた。試験器を30度傾けてかゆやゼリー状の飲食物を上から流し、途中で滞留しないか調べる。円滑に流れれば大丈夫だと判断できるわけだ。

嚥下障害の高齢者の食事は、介護や看護がしやすいため、管から栄養をとる「経管栄養」が主流だった。ただ、最近では食材の加工を工夫し、口からとれる「嚥下食」が重視されてきた。高齢者の低栄養を改善できれば、医療費抑制や口腔のリハビリにつながり、味や季節感を楽しめる食事で生活は豊かになる。
(食材を事前チェック 「嚥下障害」高齢者向け試験器)


高齢者施設で実習させていただいたとき、この「とろみ食」はよく使われているのを見ました。この試験器を開発したニュートリーさんは、とろみ食分野で18%のシェアを持つトップ企業とのことなので、もしかして、こちらの企業の製品を使っていたのかもしれません。

嚥下障害とは、老化や疾病(脳卒中が最多といわれています)などの原因により、飲食物の咀嚼や飲み込みが困難になる障害をいいます。

通常、咀嚼した食物は舌を使って咽頭へ送られ、嚥下されます。その時、軟口蓋が挙上することで、口腔と鼻腔が遮断されます。また、喉頭蓋で気管への道が蓋をされ、嚥下の瞬間だけ開く食道へと送り込みます。これらの複雑な運動に関わる神経や筋肉に何らかの障害が生じた場合、嚥下障害が起こります。

こうした嚥下障害が起こると、誤嚥が起こって食物が気管に送られてしまい、その結果、誤嚥性肺炎の原因となります。誤嚥は、唾液や食べ物が気管に入ってしまう現象です。最も問題となるのは、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があることです。

この試験器を使用すれば、「どんな食べ物がむせやすいか」ということが一目で分かります。すでに、先月から約20の病院や介護施設に無償配布を始めているそうです。さらに、高い効果を確認できれば在宅介護を行う一般家庭向けに試験器を販売していくそうです。

とくに、今後は高齢化が懸念されており、在宅介護を行う家庭も増えていくと考えられます。普及していくことが期待されます。

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