神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)の医師2人が、48人の乳がん患者に対し、同意書を得ず抗がん剤を使った臨床試験をしていたことが27日分かった。
 
神戸市によると、2人は、同病院外科の医長と、昨年7月退職した元医長。
2人は16年2月から17年10月まで、乳がん手術の前に抗がん剤を投与する臨床試験を49人に対して実施。4種類の抗がん剤を、通常とは異なる順番で投与した。
 
実施計画書では、患者への説明と、同意書への署名を得ることが必要だが、同意書が残っていたのは1人だけだった。
(同意書得ず48人に臨床試験 神戸の市立病院外科医長ら)


臨床試験とは、医学における介入研究(対象者に対して人為的な操作を加えることによって、因果関係を直接的に証明したり、治療効果を確認する手法)の全般を臨床試験と呼びます。特に、新薬の承認、あるいは既存薬の新たな適応の申請のために、製薬企業が行う臨床試験を「治験」といいます。

一般的に、動物での安全性や有効性を試す実験を基礎研究と呼び(前臨床試験)、次の段階として臨床試験があります。つまり、臨床試験は全てヒトを対象とする研究であるといえます。臨床試験の流れとしては、
第義蟷邯魁Х鮠鐃佑鯊仂櫃北瑤琉汰汗と薬物動態を検討する。抗癌剤など明らかに有害な薬では例外的に患者を対象とする。

第響蟷邯魁Т擬圓鯊仂櫃箸掘¬物に効果があるかということを評価する試験である。

第形蟷邯魁Ы祥茲量瑤茲蠍果があるかどうかを調べる。この段階で無作為化と盲検法が必要となる。

第諺蟷邯魁Э渓発売後、一般臨床医から有効性、安全性に関する情報を収集する。

となっています。

こうした臨床試験を行うには、「臨床試験実施基準」に従わなければなりません。
臨床試験実施基準とは、製薬会社が、医師に依頼して新薬開発のための臨床試験を行う場合、患者の人権を守り、倫理的な配慮のもとに、科学的に正しい研究が行われるように国によって決められた基準のことです(1990年10月より施行)。この基準が策定された背景には、データの改竄や、患者さんへのきちんとした説明をしないまま試験に参加させるなど、科学的、倫理的に問題が起こったためです。

臨床試験実施基準は、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準good clinical practice(for trial of drug)」とも呼ばれます。基準の内容としては、
1)治験審査委員会の設置を中心とする治験実施にかかわる医療機関の適正な組織や手続き,適正な治験担当医師の要件と業務
2)被験者の人権保護のためのインフォームドコンセントinformed concentの実施
3)適正な治験実施計画書や総括報告書の作成と記録の保存
4)治験薬などの適正な管理
5)厚生省職員等による資料および治験実施施設の調査・確認
といったことが、基本となっています。

とくに、患者さんの権利を守ることは重視されます。臨床試験を行うには、実施計画書を作成し、審査委員会(臨床試験実施基準」では、各大学、各病院に審査委員会を置くことが決められています)の許可が必要となります。さらに、試験内容やリスクなど、しっかりと理解した上で臨床試験に参加していただくように、同意書などが必須となっています。

ですが、上記のニュースではこうした同意書が交わされていなかったようです。認識が甘かった、と言わざるを得ないのではないでしょうか。今後は、審査委員会の監査機能の充実や患者さんへの説明を十分にする、といった意識をしっかりともつことが必要となると思われます。

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