マレーシア警察は、医学的な訓練を受けていないのにもかかわらず、29年間歯医者として開業していた男性(63)を逮捕した。男性は自宅にて、ゴミから拾ってきた治療用のイスに患者を座らせ、治療していた。

男性がまともな歯医者療と最も身近に接していたのは1962〜78年のこと。当時、軍の歯医者がプランテーションで働く労働者たちの家を訪問する際、男性は助手として同行し荷物を運んでいた、と地元紙「ニュー・ストレート・タイムズ」紙は15日、報じた。

匿名で報道されたこの男性は助手時代を振り返り「医師が労働者の歯のトラブルを診断し、治療する様子を観察したものです。歯を抜いたり、義歯を作るために歯型を取ったり、計測の方法も見ていました」と話した、と同紙は引用している。

男性は、歯医者の助手として働くには年を取り過ぎていると言われたこともあり、近所の人たちには自分は「引退した軍の歯医者」であると語って治療を続けていた。抜歯には20リンギット(約649円)、義歯には130リンギット(約4,220円)を請求していた。

保険当局は何者かから男性に関する情報を得たため、今週、男性の自宅を襲撃、抗生物質や鎮痛剤、注射針そして瓶入りの漢方薬を押収した。さらに1940年代に製作され、1978年にマレーシア軍が捨てたとされる治療用のイスを運び出そうとしたところ、男性6人の力でも間に合わないほど重かった。

男性は違法に歯医者として開業していたかどで逮捕され、マレーシアにおける「個人負担医療施設および業務に関する条例」のもと、3万リンギット(約97万3,900円)の罰金または6年間の禁固刑、もしくは両方の罰を言い渡される可能性が出てきた。違法ではありながら、男性は「私は往診もするんですよ」と、独自のサービスを提供していたことを話していた。
(キャリア29年のニセ歯医者が御用)


近年では、できるだけ歯を残す方向に動いてきているそうですが、それでも抜歯適応となることは多いそうです。適応となるのは、以下のような場合です。
1)う蝕や歯髄炎、歯周疾患がきわめて進行し、あるいは治療効果が期待できない根尖病巣を持つため、歯の保存が不可能となる場合
2)隣接歯や歯周組織に悪影響を与える場合
3)歯性感染症や歯原性嚢胞、歯原性腫瘍の原因歯となっている場合
4)矯正や補綴のために必要な場合
5)下顎骨骨折や上顎骨骨折において、治療の妨げとなる歯
6)悪性腫瘍を刺激する歯

抜歯は自分で行ってしまう人がいるように、軽視されがちですが、それでも多くの危険が伴います。

抜歯の偶発症でもっとも知られるものは、三叉神経や顔面神経の麻痺などです。
たとえば、下顎の歯、特に下顎第三大臼歯では、根尖部のすぐ近くを三叉神経第三枝である下顎神経の枝の下歯槽神経が走行しています。抜歯時に歯根がこの下歯槽神経を圧迫し、傷つけるという事がある。これにより口唇等にしびれが長期にわたり残るってしまうことがあります。

この他、上顎の歯が上顎洞に迷入してしまい、上顎洞炎を起こしてしまうことがあります。また、抜歯後に止血しにくいことや、後出血(いったん止血した後に再び出血)などに対しても処置が必要になることがあります。

それにしても29年もの間、気づかれずに(気づいていたとしても明るみにならずに)続けてきた、というのはすごいことではないでしょうか。免許さえあれば、と思わずにはいられません。

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