ザ!世界仰天ニュースで取り上げられていた内容です。
1987年アメリカ・カリフォルニア州リバーサイドにある病院で騒動が起きていた。ソール・ケントは医師の制止を振り切って一人の女性患者を車に乗せた。連れ出した患者は83歳の母親ドーラ。重い脳疾患で入院中に肺炎をこじらせ危篤状態だった。息子は母を連れ、ある場所へ急いでいた。目的場所は当時カリフォルニア州にあったアルコー延命財団とよばれる施設だった。やがて運ばれてから5時間後…ドーラは呼吸も脳波も停止。ソールが静かに最後の別れを告げた後、人体冷凍保存のための処置が行われた。「クライオニクス」つまりそれは死亡させた人をそのまま、冷凍保存しクローン技術などが発達した未来に蘇らせることを目的としていた。
アメリカでは、1960年代に研究が始まり76年、最初に冷凍保存を確立させたのがこのアルコー延命財団。現在、ここに保存されている遺体は40体ほど、このタンクのような装置に腐敗しないよう液体窒素と共に納められている。更に死んだら冷凍してほしいと登録している蘇生希望者は世界中に800人もいるという。
実は彼自身も冷凍保存の研究者であった。最愛の母を最も良い状態で冷凍保存したいというソールの願いにより、ドーラは絶命後すぐに首を切断され頭部のみ冷凍保存された。
しかしこれが事件へと発展する。ソールは胴体部分を火葬する手続きをとるため公衆衛生局へ。医師の死亡診断書を求められるも強引に病院からドーラを連れ出したため、医師は立会っていなかった。このことで埋葬や火葬の許可が下りなかった。そしてこの事が衛生局から検視局に通達され、レイ・カリロ検事がアルコー財団へ赴き、死亡証明を調査し始めた。データだけでは死亡証明にはならず、胴体部分による検死解剖が行われた。その結果、体内から微量のバルビーツール酸系の睡眠薬が摘出された。
生きているうちにこの薬品を打たれた可能性が高く、死に至る可能性もある薬だった。殺人事件の可能性が出てきた以上、頭部を調べる必要性が出てきた。カリロ検事はアルコーに頭部の検死の要請をした。しかしアルコー側は故人の遺志を無視することは出来ないと拒否。ソールも同じ意見だった。そしてカリロ検事は、ドーラの死亡隠蔽および殺人未遂容疑で強制捜査へと踏み切った。ソールとアルコー側の意見も無視し、遂にはSWATまで出動。しかし肝心のドーラの首は見つからなかった。そしてアルコー側は検察、警察を訴えに出た。罪状は人権侵害。そして裁判結果により、検察と警察は団体への捜査を禁じられた。
人体冷凍保存(Cryonics)とは、未来の医療技術で蘇生できることを期待して、人の遺体を約-196℃の液体窒素下で冷凍保存することで、現在の医療技術では治療不可能な病気や怪我でも、それが可能になったころ蘇生させ治療しようという考え方のもとに用いられる技術です。
上記でも登場しているアルコー・ライフ・エクステンション財団は実在し、体全体の保存では15万ドルで半永久的な冷凍保存を請け負っています。
私がこの技術について始めて知ったのは、アメリカ横断ウルトラクイズの第13回(1989年)大会で、この「冷凍人間保存の会員権」優勝賞品として登場したことを鮮烈に覚えています。その当時は、何となく漠然とこの技術が近い将来に実現化する(解凍して、蘇る)ことを信じていました。
17年経った現在ですが、今もあまり変わっていないようです。実際には、人体に含まれる水分が冷凍されることで膨張し細胞膜等を破壊してしまう等の問題があり、単に遺体を冷凍しただけでは、解凍したとしてもその人体を蘇生させることは困難であるとされています。
そのため「水分を事前に何らかの方法で不凍液などに置換し、冷凍時における細胞膜の破壊を防ぐ」「解凍後にナノテクノロジーの応用で細胞膜を補修する」等の解決策が検討されていますが、現在のところ実用化に至っているものはありません。
たとえ実用化されたとして、私だったら保存してもらいたいかと考えると…どうでしょうか。将来、そんな価値ある人間になっているかどうか…。1989年当時だったら、即決で「やってもらいたい!」と言うと思いますが、もはや子供ではなくなってしまったのだな、としみじみ思いました。
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1987年アメリカ・カリフォルニア州リバーサイドにある病院で騒動が起きていた。ソール・ケントは医師の制止を振り切って一人の女性患者を車に乗せた。連れ出した患者は83歳の母親ドーラ。重い脳疾患で入院中に肺炎をこじらせ危篤状態だった。息子は母を連れ、ある場所へ急いでいた。目的場所は当時カリフォルニア州にあったアルコー延命財団とよばれる施設だった。やがて運ばれてから5時間後…ドーラは呼吸も脳波も停止。ソールが静かに最後の別れを告げた後、人体冷凍保存のための処置が行われた。「クライオニクス」つまりそれは死亡させた人をそのまま、冷凍保存しクローン技術などが発達した未来に蘇らせることを目的としていた。
アメリカでは、1960年代に研究が始まり76年、最初に冷凍保存を確立させたのがこのアルコー延命財団。現在、ここに保存されている遺体は40体ほど、このタンクのような装置に腐敗しないよう液体窒素と共に納められている。更に死んだら冷凍してほしいと登録している蘇生希望者は世界中に800人もいるという。
実は彼自身も冷凍保存の研究者であった。最愛の母を最も良い状態で冷凍保存したいというソールの願いにより、ドーラは絶命後すぐに首を切断され頭部のみ冷凍保存された。
しかしこれが事件へと発展する。ソールは胴体部分を火葬する手続きをとるため公衆衛生局へ。医師の死亡診断書を求められるも強引に病院からドーラを連れ出したため、医師は立会っていなかった。このことで埋葬や火葬の許可が下りなかった。そしてこの事が衛生局から検視局に通達され、レイ・カリロ検事がアルコー財団へ赴き、死亡証明を調査し始めた。データだけでは死亡証明にはならず、胴体部分による検死解剖が行われた。その結果、体内から微量のバルビーツール酸系の睡眠薬が摘出された。
生きているうちにこの薬品を打たれた可能性が高く、死に至る可能性もある薬だった。殺人事件の可能性が出てきた以上、頭部を調べる必要性が出てきた。カリロ検事はアルコーに頭部の検死の要請をした。しかしアルコー側は故人の遺志を無視することは出来ないと拒否。ソールも同じ意見だった。そしてカリロ検事は、ドーラの死亡隠蔽および殺人未遂容疑で強制捜査へと踏み切った。ソールとアルコー側の意見も無視し、遂にはSWATまで出動。しかし肝心のドーラの首は見つからなかった。そしてアルコー側は検察、警察を訴えに出た。罪状は人権侵害。そして裁判結果により、検察と警察は団体への捜査を禁じられた。
人体冷凍保存(Cryonics)とは、未来の医療技術で蘇生できることを期待して、人の遺体を約-196℃の液体窒素下で冷凍保存することで、現在の医療技術では治療不可能な病気や怪我でも、それが可能になったころ蘇生させ治療しようという考え方のもとに用いられる技術です。
上記でも登場しているアルコー・ライフ・エクステンション財団は実在し、体全体の保存では15万ドルで半永久的な冷凍保存を請け負っています。
私がこの技術について始めて知ったのは、アメリカ横断ウルトラクイズの第13回(1989年)大会で、この「冷凍人間保存の会員権」優勝賞品として登場したことを鮮烈に覚えています。その当時は、何となく漠然とこの技術が近い将来に実現化する(解凍して、蘇る)ことを信じていました。
17年経った現在ですが、今もあまり変わっていないようです。実際には、人体に含まれる水分が冷凍されることで膨張し細胞膜等を破壊してしまう等の問題があり、単に遺体を冷凍しただけでは、解凍したとしてもその人体を蘇生させることは困難であるとされています。
そのため「水分を事前に何らかの方法で不凍液などに置換し、冷凍時における細胞膜の破壊を防ぐ」「解凍後にナノテクノロジーの応用で細胞膜を補修する」等の解決策が検討されていますが、現在のところ実用化に至っているものはありません。
たとえ実用化されたとして、私だったら保存してもらいたいかと考えると…どうでしょうか。将来、そんな価値ある人間になっているかどうか…。1989年当時だったら、即決で「やってもらいたい!」と言うと思いますが、もはや子供ではなくなってしまったのだな、としみじみ思いました。
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