深刻化する医師不足に歯止めをかけるため、政府は、来年4月から大学医学部の入学定員を各都府県で最大5人、北海道で最大15人増やすことを認める方針を固めた。増員分の学生の入学金や授業料は自治体が全額肩代わりし、卒業後は僻地(へきち)などの病院や診療科を指定して9年間の勤務を義務付ける。

期間は10年間で、1年に最大計245人の増員となる。政府・与党が5月に発表した緊急医師確保対策の一環で、国は都道府県に地方交付税を増額する形で財政援助する方針。

医師不足が深刻な山間部や離島などの医療圏や、産科、小児科などの医師確保が狙い。ただ卒業までに最低6年間かかるため、効果が表れるのはしばらく先になりそうだ。

計画によると、増員対象とする大学の選定や人数、卒業後の勤務先については、自治体の担当者や大学、医療関係者でつくる都道府県ごとの協議会が決める。学生には入学金と授業料の全額に加え、生活費の一部を奨学金として支給。卒業後に指定した医療機関で勤務できなくなった場合は、全額を返還させる。
(“ドクターコトー”奨学金で育成 9年間勤務を条件に学費全額支給)


こうした取り組みは既に自治医科大学でなされています。卒業後の10年近くを「義務年限」として、へき地医療に従事させる代わりに、授業料を免除(実質上は貸与、ということになるのでしょうが)するというシステムのようです。特に"私大"ということになっているため、かなり高額になっており、簡単には返還するのは難しい状況のようです。

以前から、「2年間の研修ローテートを義務づける」ことと引き替えに、医学部の定員を増やす、もしくは奨学金を出す(授業料の代わりにする、ということも)、という案がありますが、これだと2年後にはその地を離れる可能性もあり、抜本的な改善にはならない、という声もあります。その点を考えれば、9年間という義務年限なら、その後も留まるという可能性が高まるのではないでしょうか。

ですが、6年間というのは短いようで長いということもあります。途中でドロップアウト(卒業できない)という人はどうするのか、もしくはどうしても卒業後に勤務することができない(病気や家庭の事情などで)という問題がでてくる可能性があります。おいそれと払える額ではないと思われるので、大きな負債を抱えることになってしまうでしょう(もちろん、そういう覚悟をもって入学すべきなんでしょうが)。

また、入学後に進みたい道が変わってくることもあるでしょう。選択性がさらに広がった入試の方法で、果たして受験生がどのように動くのか、興味深いところです。

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