滋賀県近江八幡市の市立総合医療センターで、産婦人科の医師が相次いで退職し、新規の出産受け付けを中断していることが分かった。センターは昨年10月に最新鋭設備をそろえ、オープンしたばかり。24時間体制でリスクをともなう妊産婦らを受け入れる地域周産期母子医療センターにも指定されている。施設やシステムの充実に、スタッフの手当てが追いつかない厳しい現実があらわとなった。

センターによると、7月に産婦人科で常勤医3人のうち2人が退職、転勤した。8月までに1人しか補充できず、常勤医2人体制のままでは、当直体制が組めない。そこで、こうした事態を見越して6月下旬から、新規の出産受け付けは断っている。
 
すでに出産を予約した約260人については、非常勤で医師2人を確保して対応している。このまま来年1月以降も常勤の医師が確保できない場合、出産受け付けは中止せざるを得ない。

センターの平野幸男事務長は「常勤医がもう1人確保できれば当直が組め出産に対応できる。大学医局も産婦人科医不足でなかなかまわしてもらえないが、努力したい」と話している。滋賀県では、隣の彦根市立病院でも4人いた産婦人科医が3月に1人になり、出産を中止したこともある。
(医師不足で出産受け付け中断 近江八幡市医療センター)


全国各地で産婦人科医不足で休診、出産中止が相次いでおり、厚生労働省によると、産婦人科医はすでに平成16年に1万1,000人を割っているそうです。もはや待ったなしの様相を呈しています。

昼夜を問わぬ分娩など、産婦人科医の労働条件は過酷だという。激務のうえに高い訴訟率、少ない診療報酬、医学生の産婦人科離れなどの要因が重なり、慢性的な医師不足から脱却できないでいるとのこと。

全国80大学の産婦人科医局に実施した調査で、大学病院でも医師不足が深刻になっている実態があきらかになっており、研究も思うようにできない状況にあるようです。地域の病院に派遣していた医師を引き揚げても補えず、5年間で医師が半減した大学も多いそうです。高度医療と人材育成、治療法の研究を担う大学病院の産婦人科が危機に直面しています。

訴訟に対する補償や勤務状況の改善、産婦人科医育成システムの確立など、課題は山積みです。少なくとも、今の状況よりも悪化しないことが望まれます。

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