奈良県の荒井正吾知事は6日、定例会見で妊婦死産問題に触れ、ハイリスクの妊婦らに24時間態勢で対応するため、来年5月に開設予定の総合周産期母子医療センターについて「一部でも前倒しで稼働させたい」と述べた。時期は未定。
 
同様のセンターは大半の都道府県に設置されているが、奈良県など6県にはない。荒井知事は医師の確保も含めて早急に検討するとした。5日に発足した2府7県の広域連携体制に関しては「大きな前進」と強調した。

ただ、今回のように、かかりつけ医がいない妊婦らの救急搬送が必要な場合に「救急と周産期の病院側で連携に不足がある」とし、7日からの妊婦死産の検討委員会で話し合う意向。死産の経緯などを確認し、県の周産期医療システムの不備も取り上げるという。
 
また、この問題が起きた中和広域消防組合(橿原市)の救急患者が、病院から受け入れを10回以上断られたケースが、昨年1年間で129件、今年は8月までで既に127件に上ることが判明。医療機関の受け入れ体制の問題点が浮き彫りになった。
(奈良県「周産期センター」稼働前倒し 死産問題受け)


二度と悲劇を繰り返さないためにも、こうした施設の稼働は必要不可欠であると思われます。奈良県は、大淀病院は今年4月から、産科を休診。同県の中南部地域では、五條市の県立五條病院が昨年4月に産科を閉鎖し、大和高田市の市立病院でも同年6月、妊婦の受け入れを周辺5市町に限定するなど、現状では大規模病院の産科がゼロという異常事態になっているそうです。

そんな中、朗報となると考えられますが、一抹の不安が。果たして、継続して施設を運用していくことができるのでしょうか。

そもそも、上記病院が次々と産科を閉鎖せざるを得なかった理由として、「産科医がいない」ということが挙げられると思われます。それは、「総合周産期母子医療センター」を稼働してもクリアすべき問題として、残り続けるのではないでしょうか。

29日に奈良県の女性が産婦人科を探したが、奈良県では受け入れ先が見つからず、12カ所目に打診した高槻市の病院へ搬送する予定だったが、病院へ着いた頃には流産してしまっていたというニュースが流れ、多くの批判を受けたと容易に想像されます。ですが、十分な人手を確保できずに、(言い方は悪いですが)自転車操業を始めてしまうと、またスタッフが次々にいなくなってしまう、ということも考えられます。そうなってしまっては、先の状態の二の舞になってしまいます。

焦って不安定な運営をするのではなく、しっかりと調整を行い、センターの継続を続けていただきたいと思います。

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