舛添要一厚生労働相は8日午前、地方を中心に深刻化している産科の医師不足問題について「勤務医の勤務環境が非常に悪い。やはり報酬という面で見てあげないと。それはやりたい」と述べ、勤務医の診療報酬を引き上げる方針を示した。民放番組出演後、記者団に語った。
 
医師の過失を立証できなくても患者に金銭補償する無過失補償制度に関しては「まず脳性まひのケースについて具体的にスタートさせる」と強調。産科医減の原因の一つとして医療事故による訴訟リスク問題があることを踏まえ、制度導入に向け具体策作りを進めていることを明らかにした。

再調査を進めている社会保険庁の職員による年金保険料の横領問題については、個々の事例に対する処分や公表の状況を10日午後までに明らかにする考えを示した。
(産科勤務医の診療報酬上げ、厚労相が方針)


産科医の不足理由として挙げられる「非常に厳しい勤務環境」「訴訟リスク」を是正するため、まずは報酬面および無過失補償制度導入を目指すと方針を示したようです。

無過失補償制度は、スウェーデンやフィンランドでは既に、社会保障制度として確立しているそうです。イギリスでは重い障害が起きた事故に関して、フランスでは国立病院での医療事故を対象にこの制度が導入されているそうです。

これは、実は患者さんの側にとってもメリットはあります。賠償保険は、訴訟などで医療従事者の過失が認定されるか、医療機関が示談に応じた場合しか患者側は補償を受けられませんが、医療従事者の過失が明白なケースは僅かで、残りは解決が長引く傾向があるということからも、公的な補償制度の導入は歓迎すべきものではないでしょうか。

ただ、厚労省の研究班による脳性まひを対象にした試算だけでも、支払額は年間約360億円にも上ると考えられています。となると、その財源をどこから持ってくるかが問題ですが、今後の産婦人科医療を考える上で、必要不可欠なものとなるでしょう。

緊急搬送の問題に端を発し、ようやく風向きが変わってきたようです。今後の動向に期待したいと思います。

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