月刊誌「文芸春秋」10月号に掲載された対談「変な国・日本の禁煙原理主義」に登場した解剖学者の養老孟司氏と劇作家の山崎正和氏に対して、日本禁煙学会(作田学理事長)が15日、公開質問状を出した。

この対談で、愛煙家の養老氏と山崎氏は、たばこが害であるとする科学的根拠への疑念や健康至上主義に過度に傾斜することへの危惧を歯に衣着せぬ調子で語り合っている。

これに対して同学会は
1)肺がんの主な原因が喫煙ではないという根拠をお示しください。
2)受動喫煙には害がないという根拠をお示しください。
など6項目の質問を投げかけている。この中には山崎氏の「(中学時代に)人目を気にして吸っているので」という発言をとらえた「中央教育審議会会長のお言葉とも思えません」との疑念も。

同学会は回答の期限を10月末日と指定、公開討論にも応じるとしている。
(たばこ無害の根拠示せ…禁煙学会、養老氏らに質問状)


以前、「病気にならない生き方」を書いた新谷弘実(米アルバート・アインシュタイン医科大教授)氏に、牛乳乳製品に関し科学的根拠が疑わしい記述があるとして、医師や栄養学の専門家らでつくる牛乳乳製品健康科学会議(会長、折茂肇健康科学大学長)が質問状を送り、回答を求めたということがありました。

新谷教授は同書で、牛乳を作る過程でホモゲナイズ(均等化)することで、乳脂肪は酸素と結びつき過酸化脂質に変化してしまうとし「市販の牛乳は『錆びた脂』ともいえる」と記述。また「牛乳のカルシウムはかえって体内のカルシウムを減らしてしまう」「牛乳の飲みすぎこそ骨粗鬆症を招く」など健康への悪影響を述べています。

ですが、果たして何を根拠にしているのか、疑わしいところです。まるで大規模臨床試験でもやったかのような口ぶりですが、「長年の経験」やら「診てきた患者さんが…」という、経験則の根拠しかあげられていません。

養老孟司氏に関しても、同様なことが言えるのではないでしょうか。「私は長年、喫煙しているが大丈夫なので」ということが根拠と考えているように思います。すなわち、これらはサイエンスなどではなく、たんなる彼らの「物語」でしかありません。

最近開かれた世界保健機関(WHO)西太平洋地域委員会の年次総会でも、「たばこの影響で西太平洋地域で毎日3,000人以上が死んでおり、世界のたばこ関連の死者の3分の1を占める」と示されています。こうした数字を、果たして彼らの言う「経験に基づいた話」と比べて、どちらが説得力を持っているのでしょうか。

養老孟司というネームバリューを考えたら、「(喫煙はさほど健康被害がないということは)本当なんだろうな」と考える人もいるかも知れません。社会的な影響力を考え、今後はこうした発言は控えて戴きたいと思います。

【関連記事】
ミリオンセラー「病気にならない生き方」に科学的根拠はない?

「タバコで毎日3,000人が死亡している」という現実

フィルター付きたばこにより、肺癌のタイプが変わる?