アスベスト(石綿)吸引などで起こるとされる悪性胸膜中皮腫の治療に、大腸がん治療薬として今年承認された「アバスチン」(一般名ベバシズマブ)が有効とみられることを、矢野聖二金沢大がん研究所教授(腫瘍内科)らのチームが、動物実験で16日までに突き止めた。10月に横浜市で開かれる日本癌学会で発表する。

アバスチンは、がんに栄養を供給する腫瘍血管の形成に欠かせない、血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを阻害し、がんを「兵糧攻め」にする働きがある。

中皮腫はがんの一種で、胸の痛みや呼吸困難を伴う。治療薬として「アリムタ」(一般名ペメトレキセド)が今年承認されたが、効果は限定的とされ、新たな治療法が模索されている。

肺に胸水がたまるタイプの中皮腫の細胞を移植したマウスにアバスチンを投与する実験では、中皮腫の増殖や胸水を抑える効果がみられた。薬を与えないマウスが移植後35日で死んだのに対し、アリムタでは45日、アバスチンでは55日まで延命。両薬剤を併用した場合は65日まで延命できた。
(大腸がん治療薬、中皮腫にも効果 金沢大)


アバスチン(ベバシツマブ Bevacizumab)とは、血管内皮細胞増殖因子 (VEGF) に対するモノクローナル抗体です。VEGFの働きを阻害することにより、血管新生を抑えたり腫瘍の増殖や転移を抑えたりする作用を持ちます。

分子標的治療薬の一つであり、抗癌剤として使用される他、加齢黄斑変性や糖尿病性網膜症の治療薬としても期待されています。また、中皮腫の増殖や胸水を抑える効果があると上記ニュースでは伝えられています。

ただ、国内ではまだ大腸癌の治療薬としてのみ(治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌)認可されており、それ以外に関しての使用としては、保険がおりない状況(「持ち出し」で使用している)だそうです。

ただ、効果は非常に高いとされ、眼科学会では非常にホットな話題で、アバスチンの治療効果が高い、という発表がいくつも並んだそうです。早く他の疾患に関しても、適応が認められることが望まれます。

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