奈良県田原本町の医師宅放火殺人の供述調書漏えい事件で、奈良地検は19日、秘密漏示容疑で、中等少年院送致となった長男(17)を鑑定した京都市左京区の精神科医をあらためて任意で事情聴取した。

関係者によると、奈良地検は14日以降、精神科医や調書を引用した本の著者でフリージャーナリストの草薙厚子さん、出版した講談社の担当編集者らを、任意で聴取しているという。精神科医が勤める病院は19日、「18日夜に地検から任意の取り調べ要請があった。午前中は代わりの医師が診察した」としている。

問題となっているのはことし5月、元少年鑑別所法務教官の草薙さんが出版した「僕はパパを殺すことに決めた」。長勢甚遠法相(当時)が6月、「司法秩序、少年法への挑戦だ」として調査を指示。東京法務局も講談社と草薙さんに再発防止を求めて勧告していた。

長男と父親の告訴を受け、奈良地検は14日、精神科医宅や東京都杉並区の草薙さん宅など数カ所を捜索していた。調べなどによると、精神科医は、昨年6月に母子3人を焼死させたとして、放火と殺人の非行事実で家裁送致された当時高校1年の長男の精神鑑定を担当。その後、草薙さんに調書の写しを渡した疑いが持たれている。
(医師宅放火の調書漏えいで鑑定医を再び任意聴取)


社会的に関心が高い事件であるとはいえ、やはり「患者」のプライバシーは守られるべきであり、(改正を訴える声は大きいが)現行の少年法に則り、少年の情報は守られるべきであると思われます。

そもそも、草薙さん1人に渡しているということも、疑問に思わざるを得ません。「少年法の改正促進のため、情報を公開する」といった名目で公表するならまだしも(もちろん、そんなことはあってはならないが)、どうしてジャーナリスト個人にこっそりと調書が渡されたんでしょうか。そこには、想像でしかありませんが、金銭の授受があったのではないか、と勘ぐってしまいます。お金は絡んではいないとしても、軽率な行為であると言わずにはいられません。

医師の守秘義務は、医師法ではなく、刑法(刑法第 134 条 秘密漏示)に定められています。
医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁護人、公証人又ハ此等ノ職ニ在リシ者、故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ秘密ヲ漏泄シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス

大きな影響力をもつ事件であるとはいえ、守秘義務は守ってしかるべきです。
また、それをジャーナリストが発表して良いという道理もない。厳密な情報管理、セキュリティの見直しが求められます。

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