最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われた内容です。

20歳の時、急な腹痛に襲われ病院に行ったところ、食中毒で負担がかかり、肝臓が少し腫れていると診断されたS・Kさん(29)。しばらくすると、37度の微熱が出ましたが、風邪でもひいたのだろうと市販の風邪薬を飲んで済ませていました。

しかし、その後も微熱は下がらず、これが平熱なのだと慣れっこになっていたS・Kさん。それから7年後、新年早々に風邪をこじらせ、病院でインフルエンザとの診断を受けます。数日後、再び高熱に見舞われたため、今度は総合病院を訪れると、またもやインフルエンザとの診断。さらに、肝臓が腫れていたため、詳しい検査を受けることになったのです。医師ははじめ、ウィルス性の肝炎を疑いましたが、エコー検査の結果、専門医は全く聞いたこともない病名を告げたのです。

所見としては、以下のようなものがありました。
1)微熱
2)度々風邪を引く。
3)肝臓の腫大

結果、医師が告げた診断は、バッド・キアリ症候群という非常に珍しい疾患でした。


バッド・キアリ症候群(Budd‐Chiari syndrome)とは、下大静脈の横隔膜下での閉塞、あるいは肝静脈の閉塞が起こってくる疾患です。結果、門脈圧亢進症、下腿の浮腫や色素沈着、腹壁静脈の怒張などを呈してきます。100万人に1人か2人という極めて稀な病で、いまだ発症の詳しいメカニズムは分かっていません。

肝臓→肝静脈→下大静脈→心臓へと続く経路が閉塞することで、流れ込む血液が肝臓に滞ってしまいます(「肝臓→肝静脈→下大静脈」と「下大静脈→心臓」の経路が塞がってしまいます)。結果、肝機能は低下し、ついには肝硬変へと至ってしまいます。

ちなみに、日常的に起こる微熱や、度重なる風邪の症状も、肝臓の機能が低下したために体力が落ち引き起こされた、と考えられます。それ以外の症状としては、あまりありませんでした。それこそが肝臓が「沈黙の臓器」と言われるゆえんです(病が重くなるまで目立った症状が出ない)。

番組で紹介していた手術は、閉塞した下大静脈を切開し、詰まった部分を取り除き、再び縫合するというものでした。手術中に静脈から大量にあふれ出てくる血液(1つめの問題)は人工心肺を使い、出血した血液を人口心肺で吸引し動脈に戻していきます。そして、切開した下大静脈を縫い合わせるための血管部分(2つめの問題。人工血管では内膜を持たないため、血栓ができやすい)には、人工血管の代わりに心臓の心膜をはがして使い、下大静脈の切り開いた部分を塞ぐように縫合します。

ちなみに、この疾患は沖縄では比較的みられるものであるため、琉球大学医学部の國吉幸男教授がS・Kさんの手術をなさったそうです。

難しい手術ながら成功し、術後1年半経つ現在、問題なく生活なさっているそうです。

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