ミャンマー・ヤンゴンで反政府デモを取材中に射殺されたジャーナリスト長井健司さん(50)について、警視庁は4日午後、都内の病院で司法解剖した。当時の被弾状況を詳しく調べ、死因の特定を目指す。

長井さんが契約するニュースプロダクション「APF通信社」によると、現地の医師が遺体を解剖したところ、体内に約3000ccの出血があり、失血死とみられる。受けた弾は一発で右胸を貫通しており、至近距離で撃たれた疑いもあるという。

警視庁は日本人が国外で重大犯罪に遭うケースを想定した刑法の「国外犯規定」を適用。組織犯罪対策2課と中野署が殺人容疑を視野に捜査を始めている。
(長井さん遺体を司法解剖=死因特定目指す−警視庁)


人の循環血液量は、体重の1/12〜1/20であるとされます。体重50kgの人なら、約2.5〜4.2 lとなります。この循環血液量の半分を出血すれば、出血死してしまうと考えられています。故に、1.3〜2.1 l以上で危険、ということになります。長井さんがどれほどの体格だったかは映像からはよく分かりませんでしたが、3Lもの出血があったとなれば、確実に失血死なさってしまうと思われます。

大量の外出血または内出血によって循環血液量が減少して起こることを出血性ショックといいます。

出血初期には脈拍頻数・乏尿・不穏状態から始まり、やがて収縮期血圧がいわゆるショックレベルの90〜100mmHg以下に下降してきます。顔面や四肢などの末梢皮膚は蒼白となり、冷たくじっとり汗をかいてきます。無気力・無力状態となり立位・座位が保てなくなります。呼吸は弱く、浅く頻数となり重篤になるとあえぐような呼吸となります。

こうしたことは、循環血液量の減少から静脈還流の低下をきたし、心拍出量の減少を招くことによって末梢組織への血流、酸素の供給が不十分となることによって起こってきます。

低血流は皮膚・内臓領域などから始まりやがて腎、その他の生命臓器への血流が不十分となってしまいます。収縮期血圧が80mmHg以下になると腎血流が急速に減り、50〜60mmHg以下になると冠血流、脳血流が急速に減って生命を保てなくなってしまいます。

出血性ショックの重篤度は出血の量と低血流におかれた時間により決まります。低血流・酸素欠乏状態下では、代謝が嫌気的となり乳酸が蓄積して乳酸アシドーシスとなります。この血中乳酸濃度は重篤度の指標になります。

是非とも真相を解明し、しかるべき対応をとっていただきたいと思われます。

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