虫歯治療で説明のないまま抜歯されたとして、東京都渋谷区の40代の男性が歯科医に930万円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は4日、164万円の支払いを命じた。孝橋宏裁判長は「抜歯回避の手段を尽くさず、その必要性も説明していない」と指摘した。

男性は02年8月、千代田区の歯科医院で虫歯が進行した右奥歯1本の治療を受け、抜歯された。精神的苦痛を受け、新たな歯を取り付けるインプラント手術も必要になったなどと主張していた。

判決は「最近の歯科医療現場では、できるだけ歯を残す治療を行うべきだとされている」と指摘。歯科医は神経の治療など抜歯以外の手段を尽くすべき義務を怠り、インフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)を軽視したと認定。手術費用や慰謝料などの支払いを命じた。
(説明ないまま抜歯 歯科医に164万円賠償命令)


インフォームド・コンセント (informed consent) は、「よく説明を受け理解した上で (informed) 、方針に合意する (consent) こと」を意味する概念です。

特に、医療行為(投薬・手術・検査など)や治験などの対象者(患者や被験者)が、治療や臨床試験/治験の内容や副作用・合併症が生じることについても説明することを指します。説明の内容としては、対象となる行為の名称・内容・期待されている結果のみではなく、代替治療、副作用や成功率、費用、予後までも含んだ正確な情報が与えられることが望まれています。

従来の医師・歯科医師の権威(パターナリズム)に基づいた医療を改め、患者の選択権・自由意志を最大限尊重するという理念に基づいています。つまり、現在では患者の意志決定が、できるだけ尊重されます(「治療を受けない」といった決定に関しては尊重されるべきですが、明らかに患者の生命に危険が及ぶような行為に関しては、考慮されます)。

もはや、インフォームドコンセントは当然なされるべき事項になっています。この原則に背いた場合、訴えられても仕方なく、ほぼ負けることが予想されます。自分本位な治療を行うことは、患者さんにとって不信感を招くだけでなく、社会的な制裁を受けることが考えられます。セカンドオピニオンなども含めた、十二分な説明が必要となっています。

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