厚生労働省などの主催で来月、神戸市で開かれる喫煙対策シンポジウムで、日本たばこ産業(JT)関係者の講演が予定されていたが、禁煙を求める団体などの批判を受け、同省が講師を変更することを決めたことが6日、分かった。

シンポジウムは、職場での受動喫煙の防止策などがテーマで、企業の取り組み事例などが紹介される。それに加え、JTが運営する「たばこと塩の博物館」(東京)の学芸部長が「たばこの歴史と文化」という題で講演する予定だった。

ところが、それを知ったNPO法人日本禁煙学会(作田学理事長)などが「シンポジウムの趣旨と相いれない」と反発。平成17年に発効した「たばこ規制枠組み条約」が、啓発活動に、たばこ産業と関係がない団体の参加などを促している点を挙げ「条約にも違反する」として講師の交代を求めていた。

厚労省は最近になって、講師を漫画家に差し替えることを決定。講演の題も「たばこがやめられる!」に決まった。厚労省は「条約違反とは考えていないが、誤解を避けるため」と変更の理由を説明。作田さんは「厚労省の対応は評価できる」と話している。
(JT関係者の講演取りやめ 喫煙対策シンポで)


「たばこの歴史と文化」というタイトルから察するに、「喫煙習慣は昔からある文化であり、今後とも皆様と共にあることを願う」といった主旨になると予想されます。となれば、喫煙対策シンポからは大分主旨が離れている、という反対ももっとものことではないでしょうか。

喫煙のみをクローズアップするのはいかがなものなのか、と思ったのかは知りませんが、やはり健康への被害に関するエビデンスが示されている以上、厚労省がこうしたシンポで「喫煙は悪でない」ということを差し挟むのは問題があると思われます。

世界保健機関(WHO)西太平洋地域委員会の年次総会でも、「たばこの影響で西太平洋地域で毎日3,000人以上が死んでおり、世界のたばこ関連の死者の3分の1を占める」と示されています。

ちなみに、最近ではNPO法人日本禁煙学会は、「変な国・日本の禁煙原理主義」に登場した解剖学者の養老孟司氏と劇作家の山崎正和氏に対して質問状(というよりも抗議といった感があります)を送っています。今後も、啓発活動に力を注いでいくことが予想されます。

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