豪クイーンズランド州の病院で、大量の有毒物質を摂取したイタリア人旅行者(24)の治療に際し、医者らがウォッカを点滴投与していたことが分かった。

この旅行者は自殺を図ったとみられ、凍結防止剤に使用される有毒のエチレン・グリコールを摂取。医者らは解毒剤として純粋なアルコールを投与していたが、病院の在庫を使い切ってしまったという。

病院関係者らは、何とかして治療を継続させるため、医者らがウォッカの点滴を行ったとしている。

トッド・フレーザー医師は10日に声明で「患者は集中治療室で3日間にわたり1時間当たり標準飲酒量3杯分(のウォッカ)が点滴投与された」と説明。患者は投与中は昏睡状態にあり、目覚めるまでには二日酔いの状態は完全になくなっていたとの見方を示した。
(オーストラリアの病院、治療として患者にウォッカを点滴)


エチレングリコールは溶媒、不凍液、合成原料などとして広く用いられる2価アルコールの一種です。甘味を持ち、生体内で代謝を受けると有毒化します。不凍液の誤飲や、ワインなどの食品添加物に誤用(過去、日本やドイツでは故意に利用)されて中毒事件の発生や社会問題化することもありました。

ヒトに対する急性毒性は、実験動物に対する毒性より強いようで、致死量は1,560 mg/kg と推定されます。ヒトの障害例は殆どはエチレングリコールを誤飲したことによる急性中毒です。

蒸気圧が低く、可能性は低いが、もし高濃度に吸入した場合、中枢神経が侵され、意識混濁、嘔吐等起こす恐れがあります。また、飲み込んだ場合は、感覚麻痺、頭痛、意識喪失、嘔吐、呼吸不全、心不全等を起こす恐れがあります。初期には、エタノール中毒に類似の症状が中心です。検査値上、血漿浸透圧の上昇および浸透圧ギャップの増大が認められることが多いそうです。

解毒法としては、エタノール投与が行われます。これは、アルコール脱水素酵素によるギ酸、シュウ酸などへの代謝を遅らせ、代謝性アシドーシスを緩和させる目的があります。また、血液透析が行われることもあります。血中エチレングリコールが測定限界以下になり、代謝性アシドーシスが消失するまで(炭酸水素ナトリウムを使用することも)毎日ビタミンB6およびビタミンB1を静注します。

「ウォッカを使った」というと少しびっくりしますが、エタノール投与はあくまでも治療として用いられるもの。患者さんが助かったことが何よりです。

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