中国遼寧省の瀋陽市公安局が、違法な臓器移植に絡んだとして「日本人男性を拘束した」と瀋陽の日本総領事館に通報していたことが12日、分かった。

総領事館によると、通報があったのは9月後半。公安局が男性の名前や容疑事実を明らかにしていないため事件の詳細は不明だが、臓器移植の仲介にかかわっていたとみられる。公安局は今後捜査を進める方針という。

中国政府は5月に、臓器提供者(ドナー)の意思尊重や臓器売買の禁止などを盛り込んだ臓器移植条例を施行、死刑囚からの臓器摘出や不透明な手続きを一掃する方針を打ち出していた。

中国政府は、日本人男性を拘束することによって臓器移植問題に厳しく対処していることを国際社会に強調する狙いがあるとみられる。

中国での臓器移植を支援している瀋陽市の現地法人「中国国際臓器移植支援センター」が一昨年明らかにしたところによると、2004年1月から05年12月までの間に日本人計108人の移植手術が行われたという。
(中国で臓器移植に絡み邦人拘束 総領事館に通報)


移植医療というと、「命をつなぐ」「患者さんの生活を改善する(QOLを高める)」といった理念や素晴らしい点がありますが、一方でこうした「臓器売買」といった負の事柄や事件に発展するケースも存在します。

国内の移植医療に対する不信感は、いわゆる和田心臓移植事件に端を発するように思います。移植患者の生存中は賞賛されましたが、死後に、提供者の救命治療が十分に行われたかどうか、脳死判定が適切に行われたかどうか、レシピエントは本当に移植が必要だったかどうかなど、厳密な脳死判定基準のなかった当時の脳死移植は多くの議論を呼びました。

脳死をヒトの死とすることに疑問を投げかける人々からの根強い批判もあり、移植を希望し登録している患者は増加する一方、移植を受けられずに死亡するケースも多く、また、海外へ移植を受けるために渡航する患者が後を絶たないという現状もあります。

真偽は不明ですが、上記のようにコーディネーターと称した海外での移植を仲介する人も多いようです。しかしながら、ドナーを含めたその移植医療の中身たるや、不明瞭な部分が多いというのも確かです。患者さんの切なり希望もあるというのは理解できますが、やはり倫理にもとることに対しては措置をとることも必要であると思われます。今後の移植医療の動向が気になるところです。

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