胃炎や胃潰瘍を引き起こし、胃がんの遠因ともされる「ピロリ菌」が、胃の粘膜に長期間にわたって感染し続ける仕組みを、東京大学医科学研究所などの研究チームが突き止めた。
 
ピロリ菌が胃の細胞に特殊なたんぱく質を注入することで細胞の新陳代謝が鈍り、菌を排除することができなくなるという。抗生物質で除菌できない耐性ピロリ菌に効く治療法の開発につながると期待される。研究成果は11日付の米医学誌に掲載される。

ピロリ菌は国内で6000万人以上が感染しているといわれる。胃の表面の粘膜に長期間とどまって胃炎などの原因になるほか、炎症が続くと胃がんの発症にもつながるとみられる。これまでの研究で、ピロリ菌は胃の細胞に付着して「CagA」と呼ぶたんぱく質を分泌することが知られていたが、その働きは詳しくわかっていなかった。
(東大など、ピロリ菌の長期感染のしくみ解明)


北海道大遺伝子制御研究所の畠山昌則教授(分子腫瘍学)らの研究グループが、胃がんの原因とされるヘリコバクター・ピロリ菌による胃の粘膜破壊の仕組みを解明した際に、やはりCagAが原因であるとしていました。

粘膜を構成する細胞は、すき間なく並んでいますが、これは「PAR1」と呼ばれる酵素が細胞同士を結び付ける役割を果たしているとされています。ところが、ピロリ菌が作り出すタンパク質「CagA」は、PAR1と結合し、その機能を阻害するとのことです。

結果、菌が表面についた細胞は、周囲の細胞から切り離され、その結果生じた粘膜のすき間に胃酸が流れ込むと、胃炎や胃潰瘍が引き起こされる、と発表されていました。

ところが、今回の発表では「CagAの生成により、細胞死が通常の半分程度しか起きない」といったことが判明し、PAR1の阻害といった以上の関連性があると判明しました。

胃という強酸性の環境下に適応するため、ピロリ菌の恐るべき性質が、また明らかになったようです。

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