臓器移植法の施行から16日で10年を迎える。この間に実施された脳死臓器提供はわずか61例で、脳死移植は定着とは程遠い状態だ。子供は制度上、国内での移植がほとんどかなわず「生きる希望」を求め、海外渡航が後を絶たない。施行3年後をめどに行われるはずだった法律の見直し作業も進まず、移植に最後の望みを託しながらも受けられずに多くの患者の命が失われている。

■「8%」
「臓器移植への理解をお願いします」。東京・銀座周辺で今月7日、移植医療の厳しい現状を知ってもらおうと、移植待機患者の家族ら約150人が行進した。腎移植を受けた阿部豊さん(36)は「手術で元気になる人がいることを知ってもらいたい」と訴える。
 臓器斡旋機関「日本臓器移植ネットワーク」によると、これまで61人の提供者があり、心臓や肝臓などが243人に移植された。昨年、約8000人の提供があった米国とは比較にならない。今年の提供数は現在11人だが、待機者数は大きく上回る。心臓移植を待つ患者だけでも8月末時点で100人。うち5年以上の待機者が17人もいる。「登録患者は増えているが移植を受けられずに死亡するケースも多い」(同ネットワーク)という。
 現行法は脳死での提供要件に「15歳以上の本人による生前の書面での意思表示」「家族の同意」を定めている。しかし昨年11月の内閣府世論調査では臓器提供意思表示カードの所持率はわずか8%。提供意思を記入している人はさらに少ない。
 大阪大学付属病院移植医療部の福嶌教偉副部長は「現行法の生前の書面による意思表明という条件は見直しが必要」と、移植条件の厳しさが脳死移植普及の鈍さの一因になっていると指摘する。

■15歳未満
「子供の移植をどうするか」という課題も進展がない。現行法は15歳未満の臓器提供を認めていない。このため、治療に移植が不可欠な子供は提供臓器のサイズの問題から多額の費用をかけて海外渡航せざるを得ない。
 東京大学付属病院(東京)に入院する千葉県富津市の小学5年、金子亮祐君(10)も国外での移植に望みを託す一人だ。亮祐君は昨年5月、血管に炎症を起こす原因不明の「川崎病」を発症。その後、後遺症から心筋梗塞を起こし一命を取りとめたが病状が悪化。補助人工心臓を装着しており助かるには移植しかない。
 母親の桂恵さん(40)は「国内で信頼のおける先生に手術してもらいたい。海外生活は不安だけど仕方がない」と肩を落とす。
(臓器移植法10年、進まぬ法改正… 提供61例のみ 子供は海外へ)


「臓器提供意思表示カードの所持率はわずか8%。提供意思を記入している人はさらに少ない」「現行法は15歳未満の臓器提供を認めていない」といった問題があり、国内での移植手術数はたった61例だそうです。

1997年10月、臓器の移植に関する法律が施行されました。これは、「本人が脳死判定に従い臓器を提供する意思を書面により表示しており、かつ家族が脳死判定並びに臓器提供に同意する場合に限り、法的に脳死がヒトの死と認められ、脳死移植が可能」となっています。

この法律は、臓器提供に関係なく脳死をヒトの死とし、本人の意思が不明であっても家族の承諾で提供可能な欧米・アジア・豪州などに比べて極めて厳しいものとなっています。結果、ドナー数は非常に少ないです。そのため、欧米及びアジアの移植医療を行う先進医療技術を持つ国の中で日本は極めて臓器移植の数の少ない移植医療後進国となっています。

脳死の定義に絡み、脳死をヒトの死とすることに疑問を投げかける意見はまだ根強く、改正は遅々として進んでいません。現在、「年齢制限なく、本人の拒否がなければ家族の承諾で臓器提供を可能にする中山太郎衆院議員(自民)らのA案」と、「臓器摘出の意思表示ができる年齢を12歳以上に引き下げる斉藤鉄夫衆院議員(公明)らのB案」があるそうです。実現性はどれほどのものかは分かりませんが、救える命がある、ということをしっかりと認識し、改正に挑んでいただきたいと思われます。

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