急病やけがで回復の見込みがなく、死期が迫った救急患者の終末期医療について、日本救急医学会は15日、人工呼吸器の取り外しを選択肢の一つとする延命治療中止基準を明記した指針を決定した。患者の死に直結する呼吸器外しを容認する指針は、これまで病院や大学単位では例があるが、学会レベルは初めて。
 
終末期医療をめぐっては、厚生労働省が5月に「患者意思の尊重」をうたった国として初の指針をまとめた。しかし、個々の医療行為には踏み込んでおらず、医療現場から「原則論だけでは使いづらい」と指摘があった。同学会は具体的な治療中止の流れを盛り込んだ指針案を2月に公表。医師や国民から広く意見を募った結果「おおむね肯定的な評価を得られた」として、この日大阪市内で開いた評議員会に諮り、8割の賛成で可決した。
 
指針はまず、救急患者の終末期を「死が間近に迫っている状態」で、かつ
1)脳死と診断された
2)生命が人工的な装置に依存し、移植などの代替手段もない
3)治療を継続しても数日以内の死亡が予測される−などの場合とした。
その上で、患者が延命治療を望まない意思を文書などで事前に示し家族も同意しているか、家族が患者の意思や希望を推定できる場合は家族の容認する範囲で「延命治療を中止する」とした。
 
中止の選択肢として「呼吸器や人工心肺などの中止、取り外し」「人工透析などを行わない」「呼吸器の設定や薬剤の投与量などを変更」「水分、栄養補給の制限や中止」を挙げた。
 
一方で「薬剤の過量投与や筋弛緩剤投与などで死期を早めることはしない」とし、積極的安楽死は認めていない。また、延命中止の妥当性をいつでも検証できるよう一連の過程を詳細に診療録に記載することも求めた。

日本尊厳死協会の井形昭弘理事長は「(延命措置の中止は)あくまで意思が明確なときだけで、不明の場合は従前通り、生命維持を続けるのが原則ではないか。家族が判断する場合は、本人の意思が公正に証明できるケースに限定すべきで、治療の打ち切りを積極的にやる必要はないと思う」としている。
(「呼吸器外し」を容認 終末医療で救急医学会)


今年の5月に、呼吸器外しに対して、「悪質性低い」医師送検に和歌山県警が意見書するというケースがありました。これは、和歌山県立医大付属病院紀北分院(和歌山県かつらぎ町妙寺)で50代の男性医師が患者の延命措置を中止するために人工呼吸器を外して死亡させたとされる事件です。しかしながら、県警妙寺署が和歌山地検に書類送検した際、「悪質性は低い」との情状意見書を付けていたことがありました。

県警は「女性の家族の強い希望を受けて呼吸器を外したこと」や、「脳死状態だったこと」などを考慮したとのことです。やはり、ガイドラインをしっかりと論議しなかったことにより、こうしたケースが生じたのではないか、と考えられます。

上記のケースの場合、消極的安楽死と呼ばれ、これ以上の延命治療、努力をしないで死に致しめたと考えられます。

昭和37年の名古屋高裁の判決によると、安楽死は以下の6つの要件を満たせば違法性が阻却されるとされています。
1.死期が切迫していること
2.耐え難い肉体的苦痛が存在すること
3.苦痛の除去・緩和が目的であること
4.患者が意思表示していること
5.医師が行うこと
6.倫理的妥当な方法で行われること

今回の救急医学会での議案としては、さらに踏み込んだ内容になっています。
しかしながら、「家族の判断」によるという部分に問題があるという批判が生じることも考えられます。事件に発展して、このような議論が途絶えてしまわないことを期待します。

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