オーストリアの首都ウィーンで、医師が76歳の女性の死亡を登録したものの、遺体の移送手配を怠ったことから、女性の遺体が9日間にわたってアパートに放置されていたことが分かった。当局が16日に明らかにした。

ウィーンにある消毒関連当局の広報担当者によると、付近の住民が悪臭を訴えたため、女性の腐乱した遺体が放置されていたことが分かったという。女性は1人暮らしだった。

同担当者は、医師は救急救命士が遺体を移送したものと思った一方、救急救命士は医師が移送手配を行ったと思っていたために手違いが生じた、と説明した。女性の遺体は10月8日に埋葬された。
(ウィーンの医師、移送手配怠り遺体を9日間放置)


国内では死亡した場合、死亡届を7日以内に提出しなければなりません(国外で死亡したときは、その事実を知った日から3か月以内)。死亡者の戸籍を抹消する届出書類として、主に死亡者の本籍地、死亡地、届出人の現住所地の順位で当該市区町村役場へ提出します。

届出用紙は市区町村役場や病院等に備えられて、用紙サイズはA3横使いで中央から左側が死亡届、右側が医師が記入する死亡診断書や検視官が記入する死体検案書の併用形式がほとんどです。

死亡診断書とは、診療継続中の患者の死亡を診断した医師・歯科医師が作成交付する書類です。上記の通り、「死亡届」用紙の右頁が死亡診断書になっています。左頁に遺族等の届出人が必要事項を記入して役所に届け出ると、埋火葬許可証が交付され、戸籍が抹消されます。

死亡診断書は、 1)人間の死亡を医学的・法律的に証明する 2)死因統計作成の資料となる、という2つの意義をもちます。

こうした死亡診断書に関わる法律としては、以下のようなものがあります。
・死亡を診断した医師は死亡診断書の交付の求めがあった場合には正当な事由がなければ拒んではならない(医師法第19条)。
・自ら診察しないで死亡診断書を交付してはならない(医師法第20条)。
・虚偽の内容を記載すれば刑法に触れる.死亡診断書の書式は医師法施行規則により定められており,氏名,性,生年月日,死亡したとき,死亡したところ,死亡の原因,発病・受傷から死亡までの期間,手術・解剖の有無,死因の種類,等々を記入する。
.異状死体の場合は死亡診断書を発行せず、警察署に届け出なければならない(医師法第21条)。


一方、死体検案書は、1)診療継続中の患者以外の者が死亡した場合 2)診療にかかわる疾病と関連しない原因により死亡した場合に、死体を検案した医師が作成する書類です。

死体検案書は表題がちがうだけで書式・内容・意義は死亡診断書と同じです。ただし、上記の事例の大部分は異状死体(外因による死亡,死因が明らかでない死亡,死亡前後の状況に異常がある死亡等)であるから、所轄警察署に届け出なければなりません(医師法第21条)。届け出により検察官または司法警察員が検視を行い、その補助行為として検案した医師が死体検案書を作成します。

今回のケースでは、「医師は救急救命士が遺体を移送したものと思った一方、救急救命士は医師が移送手配を行ったと思っていた」ために起こってしまったようです。独居のご老人だったため、遺体の移送手配をしなければならなかったのですが、思いこみによるミスが起こってしまった、とのことですね。

今後、国内でも独居で亡くなる方がこうして放置されてしまうことがあるかもしれませんね。一抹の寂しさをおぼえるニュースでした。

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