英国の調査で、同国の歯科医療システムの使いにくさのため、自分でペンチを使って歯を抜いたり、強力瞬間接着剤で歯冠をくっつけたりしている人がいる現状が明らかになった。

イングランド全域で5200人を対象にした調査報告によると、患者の約6%がちょっとした「自宅歯科」をやり始めたと答えた。国営の医療制度であるナショナル・ヘルス・サービス(NHS)を利用できる歯科医が見つからないため全く歯科にかかってないという人が10%、自己負担で民間の歯科医にかかったという人は25%だった。中には「ペンチを使って自分で14本の歯を抜かなければならなかった」とした回答者もいた。

調査では歯科医750人にも質問をしたが、NHSを利用する患者はもう受け入れていないと答えた人が45%となった。

英国歯科医師会(BDA)は、歯科医が行った治療に応じて報酬を得るのではなく、一定の収入を保証される同システムに大きな欠陥がある点が示されたと指摘。

一方政府は、NHSの歯科医療の利用に問題があることは認識しているが、今回の調査報告は状況の全容を映し出してはいないとしている。
(英国、ペンチで抜歯など「自宅歯科」する人も)


イギリスでは、ナショナル・ヘルス・サービス(NHS)という仕組みにより、古くから国営方式で医療サービスが提供されています。いわゆる「ゆりかごから墓場まで」という制度で、建前としては医療サービスに含まれるほぼ全てのコストが、政府予算で賄われ、この医療サービスは原則無料で提供される、というものです。

ですが、財源には限りがあるといったことや、病院経営がきちんと管理されていない、などの問題点が山積の制度となっているようです。また、安い給与と過酷な労働による医療従事者のモラルの低下なども、日本と同様に問題となっているようです。

結果、十分な医療サービスを受けられないと考えた患者さんは、上記のような強硬手段に出てしまうようです。

国民皆保険やNHSといったシステムは、理念としては非常に良いものですが、継続していくことは難しいことであると思い知らされるニュースです。今後の医療のあり方など、どう移り変わっていくのか、注目していきたいと思われます。

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