新しい研究結果によると、オスの寿命が短い原因は「交尾するための激しい競争」にあるのではないか、と考えられているそうです。これは人間に限らずその他の動物においても、オスの寿命はメスよりも短くなっており、なぜオスの方が短いかというと「生理的欲求」に依存しているため。

イギリスのケンブリッジ大学の研究者Tim Clutton-Brock氏とKavita Isvaran氏は、20種の異なる脊椎動物の調査を行い、一夫多妻の規模が大きくなるほど、オスの寿命がメスよりも短くなるという結果を得たそうです。その研究者たちによると、オスの交尾の競争が激しくなるほどオス一匹あたりの交尾回数が少なくなるため、そのような種のオスは、長寿になるように進化する強い動機がなくなり、寿命が短くなると説明しています。

Clutton-Brock氏によると、人間は一夫多妻制が普通だった後期石器時代くらいから、女性より男性の寿命が短くなったのではないかと考えているそうです。人類の一夫多妻制が普通だった時代は、一般的な感覚で理解しているよりも長かったようです。
(なぜオスはメスより先に死ぬのか)


「女性の方がしぶとく生き延びる」というイメージが、なぜか定着しているように思われます。日本人の平均寿命は、男性79.00歳、女性85.81歳で過去最高を更新したことが、厚生労働省が7月発表した平成18年「簡易生命表」で分かっています。この結果からも、女性に大きく引き離されています。

この差はどうして起こるのか、その研究の一つとして、上記のニュースがあるようです。その結果から、
「一夫一婦制の種(例えばカオジロコクガンまたは小型のマングース)のオスは、一夫多妻の種(例えばハゴロモガラスまたはサバンナヒヒ)のオスより女性を奪い合って、自然に競争する」

「一夫一婦制の種では、男性間の競争がより激しくなって、各々の男性は平均して、寿命が短くなる」
と説明しているようです。たしかに、"競争に負ける=自身の遺伝子を残せない"ということであり、寿命が長くなっても遺伝子が残せるわけではないので、長寿になるように進化する強い動機がなくなる、ということですね。

しかしながら、ネタ元でも言っていますが、この研究が男性の一夫多妻制を肯定したり正当化したりするものではありません。この仮説が正しいという確たる証拠はないでしょうから。

実は「なぜ女性よりも先に、男性が先に亡くなるのか?」という研究には、諸説あります。女性は一般的に男性よりも体が小さく、エネルギー効率が良い、といった説もあります。

他にも、人類は狩猟は男性、子育てや料理などは女性が、というふうに分担を分けてきました。一方で、オスとメスが一緒に子育てをするような動物では、ほぼ同じ程度の寿命であり、このことから、"子育てをする=自身の遺伝子を残すための一手段"を行うために、寿命が長くなるように進化した、という説もあります。

果たして、どんな理由が正しいのかは不明ですが、少なくとも国内ではさらに平均寿命が延びるという試算もあるようです。寿命を延ばす要因として、がん、心疾患、脳血管疾患の3大死因の改善が寄与していますが、男女ともに3大疾患が死因の半数以上を占めており、仮にこれらでの死亡がなくなれば、男性で8.31歳、女性で7.20歳、いまよりも寿命が延びる計算だそうです。

もしかしたら、癌死を克服することができれば、さらなる長寿を目指すことができるかもしれません。進化の方向は、どうやらさらなる長寿を目指しているようです。

【関連記事】
平均寿命、平均余命の違い:日本人、長寿世界一を更新

中国都市部の交通警察官、平均寿命は43歳

喫煙は寿命3.5年縮める…厚労省研究班調査