健康意識の高まりから今やマルチビタミンやサプリはサラリーマンの“常備食”。だが、過ぎたるは及ばざるが如し、で過剰摂取はやはり問題だ。例えば重要なミネラルとして人気が高い鉄分。必要以上に体内に蓄積されると、糖尿病や神経障害を起こす危険もあるという。

鉄分の過剰摂取でおきるのは「続発性ヘモクロトーシス」。摂取した鉄分が体内で正しく分解されずに、肝臓や膵臓などの臓器に蓄積して組織沈着する病気で、やがて肝機能障害、さらに悪化すると糖尿病や神経障害などを発症することもある。

「鉄を含むマルチビタミンを毎日飲んでいる場合、女性は毎月の生理時に余分な鉄を排出できます。しかし、男性は鉄が体内にたまりやすい」と話すのは東海大学医学部付属東京病院の西崎泰弘副院長。

同病院では昨年6月、「抗加齢ドック」を開設(www.tokai.ac.jp/tokyosp)し現在までに約300人が受診しているが、男性受診者の中に、鉄分やフェリチン(鉄たんぱく)値の高い人が目立つという。

そもそもこの抗加齢ドック、人間ドックとは異なり、動脈硬化や血管の老化度などによる未病を発見するのを目的にしたもので、受診者の約6割以上が「サプリメントを日常的に摂取している」など、健康意識の高い人が多い。それだけに、こうしたサプリの落とし穴も発見しやすいともいえる。

過剰摂取が問題なのは何も鉄分だけではなく、「ビタミンAやEなどの脂溶性ビタミンの過剰摂取も、健康被害に結びつくことがある」(西崎副院長)。適切なサプリの利用を今一度見直してみてはいかがだろう。
(鉄分過多にご用心、内臓にたまり糖尿病など発症も)


正常成人の体には、3〜4 gの鉄を保有しています。その内訳は、
1)ヘモグロビン鉄に67%
2)貯蔵鉄(フェリチン,ヘモジデリン)に27%
3)ミオグロビン鉄に3.5%
4)不安定鉄プールに2.2%
5)組織鉄に0.2%
6)搬送鉄(トランスフェリン鉄)に0.08% などです。

鉄は、ヘモグロビン総重量の0.34%を占め、1 mLの赤血球は約0.5mgの鉄を含有します。鉄の吸収は、胃腸内容が酸性であると促進され、アルカリでは減少します。腸から吸収された鉄は、血漿中に入り各組織に運ばれます。血漿には、トランスフェリンという搬送担鉄タンパクが存在し、赤芽球や肝細胞の表面にあるトランスフェリンレセプターを介してそれぞれ細胞内に運ばれます。

吸収された鉄および網内系細胞で処理された老化赤血球由来のヘモグロビンの鉄は、血漿のトランスフェリンと結合して、その約80%は赤芽球および網赤血球のヘモグロビン生合成に利用され、残りが肝などの網内系組織に取り込まれます。

つまり、体の中の鉄の80%はリサイクルされ、汗などから排泄されるなどの他は、あまり外には出されません(鉄は赤血球をつくる大事な成分なので)。

ですので、あまり過剰に摂取するのは困りもの(特に男性は)。鉄分の1日必要摂取量は、男性10mg、女性12mg程度であるとされています。それ以上はあまり必要ないように思います(鉄欠乏性貧血の方などは別です。病院で処方された鉄剤などは、しっかりと飲んでください)。

また、ビタミンに関しても、過剰摂取はあまり勧められたものではありません。ビタミンは脂溶性と水溶性に大別できます。ビタミンA、D、E、Kは脂溶性であり、過剰摂取によっては蓄積による過剰症を呈することがあります。

特にビタミンAは排泄されにくく、過剰摂取により過剰症をきたしやすいといわれています。急性症状は、小児に主にみられ大泉門膨隆、意識障害(傾眠傾向)、吐気、嘔吐などです。慢性症状は、小児では食欲不振、頭痛、嘔吐、骨関節痛などで、肝脾腫や貧血がみられ、骨のX線像では骨過形成や骨膜増殖がみられます。

何事も、「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということでしょうか。サプリメントには頼らず、しっかりと食事から摂りたいものですね。

【関連記事】
大腸癌予防には、男はビタミンB6 女はコーヒーが効果的

ビタミン剤取り過ぎで前立腺がんに?

プリオンの病原性、新ビタミンが抑制