血液製剤「フィブリノゲン」の使用をめぐる薬害肝炎問題で、製薬会社や国のずさんな対応が問題化している。薬害肝炎が社会問題化した平成14年の時点で、田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)や厚労省が、被害患者の情報を把握していながら、本人への告知を怠っていたことが明らかになったからだ。早期に本人に伝えられていれば、患者が感染原因を把握できることにつながったほか、早期治療が可能となった可能性もある。厚労省は今週中に製薬会社に患者への連絡を要請、当時の経緯や対応も検証する考えだ。

問題となっているのは、418人のC型肝炎患者の副作用情報をリストにする際に集められた個人情報。リストは薬害肝炎が社会問題化した平成14年に、厚労省の報告命令を受けた田辺三菱製薬が医療機関からの副作用報告などをもとに作成していた。

リストそのものには、患者の氏名や病院名など個人を特定する情報は書かれておらず、これまで製薬会社側が個人を特定しているかどうかは明らかでなかった。

しかし、薬害肝炎訴訟の中で、原告の1人がリストの中に掲載されている人物と同一であることを製薬会社側が認めたことから、製薬会社が個人を特定する情報を持っていることが発覚。さらに、厚労省内からも19日になって、一部の患者のイニシャル、医療機関名、医師名などが書かれた資料が見つかった。厚労省はこれまで「個人情報の報告は受けていない」と説明。資料の作成経緯は不明という。

患者救済の姿勢からほど遠い製薬会社や厚労省の姿勢が明らかになりつつあるいことで、患者団体は反発を強めている。
(患者情報、製薬会社や国が5年前に把握 薬害肝炎問題)


C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(以下HCVと略す)に感染することで発症するウイルス性肝炎の一種です。血液が主な感染経路であり、いわゆる医原性の感染が多いと言われています。予防接種の注射器の回し打ちをしていた世代や、輸血による感染が多いといわれています。

A型肝炎やB型肝炎と異なり、急性肝炎から経過が遷延して慢性肝炎、肝硬変へと進展する例がかなり多いといわれています。主たる感染経路は輸血ですが、献血時の抗体スクリーニングが徹底して輸血後肝炎としてのC型肝炎は激減したといわれています。

抗ウイルス療法として、インターフェロンが用いられます。現在、政府・与党はウイルス性肝炎の治療、インターフェロン(IFN)療法への医療費助成制度を設ける方向で検討に入っているそうです。急性肝炎では発症後6ヶ月以内に投与すれば著効します。慢性肝炎ではインターフェロン単独投与とインターフェロン+リバビリン併用療法が原則的な治療法です。

ただし、C型肝炎ウィルスの内、わが国では6種類(1a、1b、2a、2b、3a、3b)が存在すると考えられています。その割合は、遺伝子型の1aが1%、1bが70%を占め、2aが15%、2bが10%です。遺伝子型の3は報告はあるもののきわめて稀だそうです。1bがもっとも多いのですが、これはインターフェロンに反応しにくいといわれています(1群は2群より効きが悪く、1群の中でも1b は 1a より更に効きが悪い)。

ただ、こうした治療を選択肢に入れられるのと入れられないのでは、大きな違いがあります。患者さんに情報が伝えられていれば、こんな不信感を抱かれることもなかったでしょう。この問題を解決するには、どうしてこんな情報の秘匿が行われたのか、しっかりとした調査や情報開示が必要となってくると思われます。そして、十分な患者さんに対する補償が必要です。今後、こうした問題が再び起こらぬよう、十分な対策が求められています。

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