厚労省が22日に公表した薬害肝炎の患者情報に関する調査報告では、厚労省が把握していた患者情報の中に、薬害訴訟の原告となっている可能性が強い患者の情報9例が含まれていることも分かった。

9例のうち2例について、国は裁判の中で「製剤投与の事実」を争っており、患者らは一斉に反発の姿勢を示している。

薬害肝炎訴訟全国弁護団の鈴木利広代表は「訴訟での国の対応は不誠実なものだったということになる。『被害隠し』といわれても仕方ないのではないか」と話している。

全国で計5件起こされた肝炎訴訟では、大阪訴訟で今月、和解による解決に向けた協議が始まることが決まったばかり。しかし、国の謝罪を求める原告と、政策上の責任はなかったとする国側との考えの隔たりが大きく和解協議は難航が予想されている。今回、さらに国や製薬会社による“患者無視”の対応が明るみにでたことで、和解協議はさらに難しいものになる可能性が出てきた。

全国の5裁判所で係争中の薬害C型肝炎訴訟全国原告団の山口美智子代表は「早期に公表していれば救える命もあったはず。遅きに失した対応で、国は謝罪すべきだ」と話した。

そもそも、製薬会社や厚労省が患者個人を特定する情報を持っていたことが分かったのは、訴訟の中での原告団の追及がきっかけとなった経緯がある。山口代表は「患者側から追及しないと公表しない厚労省の体質には怒りを感じる」とも話している。
(厚労省の患者情報に 薬害訴訟の原告9件も)


薬害肝炎とは、血液凝固因子製剤(非加熱第IX因子製剤であり、第衆子欠損がみられる血友病などで用いられます)の投与により、C型肝炎の感染被害がでたことを指します。現在の三菱ウェルファーマの試算によれば、フィブリノゲン製剤の推定投与数は約29万人であり、推定肝炎発生数1万人以上とされています。

薬害肝炎の発生の流れと問題点は、以下の通りです。

薬害肝炎の原因となった血液製剤は、"フィブリノゲン製剤"と"第IX因子製剤"という血液凝固因子製剤であると、患者側は主張しています。

"フィブリノゲン製剤"では、非加熱フィブリノゲン製剤「フィブリノゲン−ミドリ」およびウイルス不活化対策として乾燥加熱処理がなされた製剤「フィブリノゲンHT−ミドリ」により、薬害肝炎が発生したと考えられています。現在では、乾燥加熱処理と界面活性剤処理が施されており、薬害肝炎の原因とはなっていない、とされています。

"第IX因子製剤"には、「クリスマシン」と「PPSB−ニチヤク」があります。血友病Bの治療薬だけでなく、新生児出血(メレナなど)にも使われていたそうです。

問題点は、1985年にウイルス不活化処理がなされた加熱製剤に切り替えられましたが、その後も非加熱製剤の自主回収が行われなかったことから、1988年頃まで臨床現場で使用されていたことです。また、厚労省のリストによれば、20年前に既に薬害肝炎の存在が指摘されていたケースもあったそうです。問題を知りながらも、警告をしなかったとなれば、国・製薬会社の責任は非常に重いと思われます。

訴訟に関しては、
・大阪及び福岡地裁→主張を退けた。
・東京地裁→製薬会社の責任が認められた。
・名古屋地裁→国および製薬会社の責任を認める。
・仙台地裁→主張を退ける。
という判決が下され、地域によって別れています。
もしこの事実が明らかとなれば、裁判の結果も変わってくると思われます。

リストや情報の書かれた症例一覧表のほか、「医薬品副作用症例票」「『顧客の声』報告書」など個別の事例を記録した資料が保管されており、"誤って放置してしまった"と厚労省は発表していますが、万が一、過失で放置してしまっても、その責任は変わらないでしょう。秘匿していた、と考える方が自然でしょうが、どちらにせよ、感染拡大を手をこまねいてみていた、としか考えられません。

こうした問題の再発を防ぐため、情報公開制度や情報を秘匿した場合の製薬会社へのペナルティを含めた議論をしていただきたいと思われます。

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